京都府 

京都市北区上加茂池殿町



 北区上加茂池殿町。この辺りは、「歴史的建造物郡保存地域」に指定されている社家の町並みが続いています。洛中のいわゆる町家とは全く異なった、別の美しさがそこにはあります。これが一軒だけあるのでしたらこれほどの美しさは無いのでしょう。連なりがあるからこそ町並みなのであって、調和した町並みであるからこそ美しいのだと思います。

 さて、監督三隅研次・市川雷蔵主演映画の傑作『斬る』が、この町並みで撮影されたことをどのくらいの人がご存知でしょうか?小諸藩士高倉信吾が養父の高倉信右衛門、義妹の芳尾と明るく慎ましく暮らしていた屋敷、それがこの社家でした。でも、悲劇の芽は隠されていて隣家の池辺親子の妬心が信吾から最愛の者たちを奪っていったのです。

 

 

 

 40年前に公開された映画(62年7月1日)のロケ地が、たいして姿も変えずにこの世に存在すると言うのは、この町並みが、法によって規制され、維持されていることを示していると言えまずが、これらの家々を維持する住んでらっしゃる方々の苦労は察してあまりあります。土塀一つにしても、その塗り替えに多額のコストがかかると思います。おそらく規制当局は、禁止するだけ禁止して、その維持にかかるコストの数パーセントも援助していないのではないでしょうか?得てして役所というところは身勝手なものです。

 しかし美しい町は、住んでいらっしゃる方にとっても誇りであると思います。かなうなら、法で規制せずともこういった町並みが残せたらよいのにと思うのは私だけでしょうか?

 余談:この家に「斬る」の美術監督をつとめられた内藤昭氏と連れ立って訪れた際、「昔はこの道路舗装されてなかったんでしょうねぇ」と何気なくつぶやくみわに・・・、内藤氏すかさず「冗談じゃないよ昌子ちゃん。ちゃんと舗装されてました。撮影に際して、砂利やら何やらを運んで、舗装道路を隠したの」とのたまわり、恐れ入った次第でした。