最もオーソドックスなのは大映えある。右に抽象的で芸術写真、左に七曜表をつけた上欄と、大きなポートレートの部分に分かれているのは、切離してカレンダーはお茶の間、雷サマのシャシンはアタシの部屋のカベという親心からであろうか。それはともかく。一月から八月まで各月一人という定石を保持している。が、長谷川一夫が九月で二人というのは、時代の推移を痛感させられる。ポートレート美人として最高と定評ある山本富士子がぬけているのは、製作担当者にとっても痛手だったろう。ご想像申上げる。

 賢明といわんか要領よしといわんか、してやったのは東宝で、十二ヶ月全部が女優さん。それもすべては二人以上の組合わせである。この会社は三船敏郎をはじめ男性スターは群雄割拠、若手も多い。配列は容易なことではない。そこで一月の前と七月の前に、上半期と下半期をそれぞれ一枚にまとめたカレンダーを挿み、ここへ野郎どもの顔をちらして片づけ、本編はオール女優のお色気物重作戦とでた。お見事というほかない。ただし、女性ファンがよろこぶかどうかは疑問だ。

 日活は一月が石原裕次郎ひとり一枚看板。依然としてトップ・スターであることを立証している。sとは小林旭も宍戸錠も独走ならず。いま人気最高の吉永小百合を一人だけにしなかったのはもったいないような気がするが、そのへんに他のスターとのバランスのむずかしさがある。

 ご承知のとおり日活のスターは他社でいえばタマゴみたいな若いひとたちが大半を占めている。こうならんだカレンダーをみても、他社よりぐっと若々しさが目立っている。が、若い人たちだけでは足りないので、ワキ役の連中まで動員しているのが特色といえないこともない。

 堂々とタイアップで製作しているのは東映だけ。日活の場合は、撮影者の肩書に某娯楽雑誌の名前が入っている。これはタイアップといえるかどうかわからないが、東映の場合は電機メーカーの広告が毎月刷りこまれ、おまけにステレオだの扇風機だのテレビだの、広告の製品が、小道具に使われている。ちゃっかりしたものである。最初から独演はなく、御大の片岡千恵蔵と市川右太衛門も、それぞれ二人の若手女優とサンドウィッチになっているのは、むしろほほえましい。

 東映の場合は、実力はともかく、スターが多すぎる、ということが、こういう編集方針を生んだといれるかもしれないが、スターがすくなすぎて困っている印象がつよいのは松竹で、ここも一月から二人組合わせだが、岡田茉莉子、岩下志麻、倍賞千恵子その他、数名の女優さんはどうにかかっこうはついても、あとがつづかず、しかも男優が苦しい。伴淳三郎と藤山寛美の二人だけで十二月一面を埋めているのあたり、ご丁寧な画面構成をみても、いかに苦吟したか推察できよう。

 と、いろいろ品定めはしたものの、あらゆる種類のカレンダーの中での豪華版であることは間違いない。おフロ屋さんや床屋さんだけでなく、需要が多いのは当然である。願わくば、肝心の映画劇場の切符のほうも、需要増加でんことを。(アサヒグラフ64年1/3・10 -新年合併増大号-より)

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