婚約した姫君に誤解された若君が三度笠に旅合羽、忠義一途の若侍を助けながら天下の陰謀を未然にくい止めるというという、大映の明朗時代劇『浮かれ三度笠』は、田中徳三監督、市川雷蔵、本郷功次郎が今夏に公開した『濡れ髪三度笠』の好評にこたえて、二度目のトリオを組み、なごやかな空気のなかに、新しい時代劇を作ろうという強い気組で撮影を進めている。

 旅烏で実は若殿の主人公に雷蔵、忠義一途の若侍にこのところめっきり人気を集めている本郷、勝気な姫君に中村玉緒、その腰元にフリーの宇治みさ子、女ヤクザでこれまた本当は隠密の手下という“二つの顔を持つ女”に左幸子というバラエティーに富んだ顔ぶれだ。

 田仲監督は、「この時代劇は、きちんと上から下までスキのない着物を着た女の感じではなしに、いわば当今流行のファニーフェース的な調子のはずれた、面白さを狙っている」といい、そのため関西で新鮮なお笑いトリオとして注目されている「かしまし三人娘」歌江、花江、照江の三人姉妹を登場させ、笑いとジャズ調の民謡を織り込んだり、現代劇調の時代劇という感じを持たせている。

 中村玉緒を、強力な第一線スターに押上げるというのもこの映画の狙いの一つであるが、相手の雷蔵は撮影の合間合間は、じゃじゃ馬の姫君である玉緒をからかっては、この役の持つ雰囲気を、知らず知らずに滲み出してやろうという、先輩俳優のやさしさを見せているということだ。(日刊スポーツ 10/26/59)