こうしてあらゆる角度から『新源氏物語』をみてまいりましたが、この作品は、川口松太郎氏が現代的に解釈して書き上げたものですが、ここで紫式部の「源氏物語」について一寸説明しておきましょう。
これは全五十四帖の長編で、作者は一条天皇の中宮上東門院彰子に仕えたが、この宮仕えの前より書きはじめ、宮仕えのうちに完成したものと見られる。前の四十四帖中、四十一帖に光源氏の一生が描かれている。三帖は次の宇治十帖に移る中継で、終りの十帖を宇治に場面をとり、源氏の子、薫大将の半生を描いている。光源氏の一生は華やかな愛情の世界を中心として推移し、薫の半生は理性と本能との相克から来る失意の世界に終っている。
その間、多数の人物を配し、周到な構成をもって、貴族社会の種々相を描いている。それらの描写ににじみ出ているものは、いわゆる“もののあわれ”であって、作者の体験に基づいた理想と現実批判とがその根底に流れており、深い真実がたたえられている。また表現における人物の心理や性格の描写は、流麗典雅な文章によって的確に行われている。
待ち時間!を味わう!
或る日。かたいお話でしたのでお疲れと思いますので、こんなお話はいかが?午前九時よりA-2ステージで撮影があると云うので、九時に出勤?ところが、十時になりましたと知らされ、雷蔵さんも、メーキャップを済ませ。あとは衣裳をつけるまでに仕事をして、一寸庶務課へ、そこへ今度は午後になりますと連絡され、雷蔵さんは、御自分のお部屋には帰らず、カツラを取って待機。
お昼になる。待っているという事も、お腹のすくもんです。時計は、二時過ぎです。三時、一寸のびますね。四時、こちらがいささか変になって来ました。五時十分前、やっと雷蔵さんセット入り、それとばかりステージの中へ。シーンは葵の上との結婚式場にむかう所で、廊下を静々と歩く所。テスト二回、本番!・・・カットお疲れ様!その間わずか十二秒。私は十二秒を見るために約八時間待たされたわけです。皆さん、これは私の体験です。感心していないで、撮影の仕事ってほんとうに大変ですね。ええ、待ち時間がそんなにあるからってちっとも大変でないでしょうって!!とんでもない、ただ待っている私でも精神的なものには勝てません、疲れて。ですから、これから撮影しようとする雷蔵さんは、もっともっとお疲れになると思います。
では最後にこの作品のスタッフ、キャストを御紹介して、皆様とお別れいたします。では又次回にて・・・。
(61年9月30日発行
「よ志哉」25号より)
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