この演目は、「権八・小紫」の悲恋物語を題材にしたもの。作詞は長田幹彦。諸悪を重ねた権八が、役人の追っ手から逃れながら、恋仲となった江戸吉原の廓・三浦屋の「小紫」にしばしの別れ(あるいは永久の)を告げるため、小雨の中に禿を呼び出す。”暫くは廓へ行かれぬ身の上” で唄が始まり、番傘を持った権八と追っ手の立ち廻りの場面で盛り上がり、見どころとなります。
権八は「平井権八」(のちの白井権八のモデル)で鳥取藩士。若くして人をあやめ江戸へ逃亡。江戸へ出てからも金のため、数々の人身悪事を重ね、追われの身となる。最後は自首するが、鈴ケ森で1678年、25歳の若さで刑場の露と消えた。「小紫」も後を追い自害する。のちの人々が、目黒不動尊の仁王門入り口、左手前に碑を建て比翼塚として弔っている。
権八は、極悪非道な罪人とされているが、人情、やさしさや思いやりなどの彼特有の魅力を持ち合わせていたのかも知れない。 |