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艶尾奥山の指導を受ける山村聰イベリア兵に見守られて見事なハラキリをやる山村聰の三郎兵衛
◇・・・この映画の話題は、市川雷蔵、叶順子の初共演、リクター嬢はじめ多数の外人が珍しく時代劇に出演すること。伊藤大輔監督が数年暖めていた企画を実現したことなど数多いが、このほど行われた撮影で、有馬晴信(雷蔵)の家臣小畑三郎兵衛にふんした山村聰が、作法通りの切腹をものの見事にやってのけ話題を加えた。 ◇・・・日野江城の城主若きキリシタン大名有馬晴信は、自藩のご朱印船を無法にも撃沈したうえ、同胞を虐殺したイベリア軍艦に対し、報復の手段を取る覚悟を決め、幕府の命に背いて敢然立ち上るが、それと察したイベリア軍は、長崎を出港してしまう。 ◇・・・しかし、苦悩する晴信にイベリア船座礁の天祐がもたらされる。勇気百倍した日本軍は、小船を駆ってイベリア船が座礁した橋杭の瀬戸に進撃するが、単身先行した三郎兵衛は、時をかせぐため、自らの命を捨ててイベリア船に乗り込み、日本武士の作法に従った切腹をお目にかけようともちかける。 ◇・・・日本人のハラキリを見るのも一興・・・と好奇なショーの見物気分で興じている衆目の中を、三郎兵衛のハラキリが始まる。 ◇・・・例によってコリ屋の伊藤監督はこのシーンを歌舞伎でいこう・・・といい出し、歌舞伎出身の浅尾奥山が指導に当って、日本映画始って以来という実に微に入り細にわたったハラキリが再現された。カミシモを片ソデずつ脱いで、ハカマのスソをモモの下に引きこみ、腹を出した山村の三郎兵衛が、短刀を逆手に持ってイベリア兵たちをじろっと見渡す。 ◇・・・このシーン、ぶっつけ本番とあって、テスト中は手順の形だけが行われ、いよいよ本番。小道具さん苦心の細工をほどこした刀が山村の腹にかかると、純白の敷布の上に真赤な血が飛び散り、緊迫したふんいきを盛り上げる。貫録十分の山村聰は、歌舞伎の作法に従いながらも、これをリアルにやってのけイベリア兵にふんした外人スターたちを驚かせた。◇ |