▽渡辺君の『伊賀の水月』は柳生道場のシーン。長谷川一夫の荒木又右衛門が黒川弥太郎の柳生但馬守が極意を伝授するという緊張した場面で、わざわざ名古屋から新陰流二十世柳生厳長氏を招き、指導を受けるという懲り方。激しい気合のこもった立ち回りに、長谷川、黒川の両剣豪、たちまちグロッキーだが、柳生先生から「なかなかご器用なものです。新陰流中段、いわゆる正眼斜立ちの構えを指導しましたが、すぐのみ込んでしまった」とほめられ、極意真剣白刃どりの伝授?を受けた。
ようやくOKの出た黒川、伊藤組からのお迎えで、息つく間もなく日本左衛門に化けて、“浜松屋”のセットへ乗り込んだが、「剣豪但馬からこんどは白浪男ですから、どうも調子がおかしくって」と苦笑していた。
このあとは『弁天小僧』を終えると雷蔵が本多大内記に、田崎は河合又五郎から南郷力丸に、近藤美恵子は浜松屋のお鈴からみねと、四スターがかけもち出演、伊藤、渡辺の両監督をはじめスタッフ一同、天手古舞である。 |