左から 比沙子(越路吹雪) ぽん太(若尾文子) お福(京マチ子)

 

 焼け野原になった大阪には、住む家もなく十分な食べ物もなかった。喜久治は、四人の女を河内長野にある尼寺にあずけることにした。

 一年近くも、喜久治は尼寺を尋ねなかった。焼け残った商い蔵を製造場にして、足袋屋の再建作業が続く。七月のある日、疎開先の女から突然手紙が届いた。是非一度来てくれるようにという文面・・・。

 河内長野の尼寺を訪れた喜久治の腹巻には、それぞれの女あての小切手が入っている。山門をくぐると華やかな嬌声と湯音が聞こえて来た。植込みの向うに見える湯あみする女たちのふくよかな肌・・・。喜久治に見守られているのも知らず、にぎやかな嬌声が続く。喜久治は、女たちに会うのを止め、もと来た道をそっと引き返した。自分を取りまくすべてのものが消え去ってゆくような感傷。喜久治何か、すがすがしい心のひろがりを感じていた。