これは日本三大伝説の一つ"大江山の鬼退治"の物語に、新しい創意と解釈を加えた川口松太郎の原作を新進の田中徳三が監督するもの。久しぶりの平安朝もので、そのケンラン豪華な衣装がスタジオにきらびやかな色どりを加えている。

 物語は平安末期、時の関白藤原道長に愛妻をうばわれた近衛の武士橘致忠が都をすて、茨木、鬼童丸、袴垂保輔ら藤原の専横に反抗する革新勢力を結集し、酒天童子を名乗って大江山にたてこもる。そこで関白は源頼光に大江山に討ち入って酒天童子の討伐を命じ、頼光は渡辺綱、坂田金時らの四天王を連れ、山伏に化けて大江山に潜入するという大江山伝説に基くもの。ただ鬼だといわれていた酒天童子が、実は白面の革命児であったり、妖術を使う茨木が女性であったりするところが、伝説や歌舞伎と異なっている。

 キャストは酒天童子に長谷川一夫、悲劇のヒロイン渚の前に山本富士子、源氏の大将源頼光に市川雷蔵、四天王には渡辺綱を勝新太郎、坂田金時を本郷功次郎、碓井貞光を島田竜三、卜部季武を林成年、茨木に左幸子のほか、金田一敦子、中村玉緒、根上淳、中村豊、中村鴈治郎、阿井美千子らの文字どおりのオールスター・キャスト。

 撮影に入ってとくに重点がおかれているのが衣装で、『羅生門』、『新平家物語』、『山椒太夫』、『地獄門』などの資料を集めて、時代考証をすすめ、童子、頼光や四天王の衣装をデザインに神経が使われている。このスチール撮影が七日『東京の女性』、『勝利と敗北』出演中の山本富士子、本郷功次郎をのぞくオール・メンバーを集めておこなわれたが、現場は女優陣の朱のハカマに十二単衣のハデな色を中心に、パッと満開の花が咲き乱れたようなあでやかさ。

 田中監督は、「衣装その他に原色をふんだんに使って画面を統一したい。これは歌舞伎で幕が落ちるととき、一瞬パッと人の目をうばうあの味を映画でだしてみたいと考えるわけです」と、この色彩設計の狙いを語っていた。

(スポニチ大阪 03/07/60)