念願の他社出演を松竹大船の小津安二郎の『彼岸花』で果たすなど、“ほんまにええ年”をおくった大映の山本富士子、さきごろから正月作品天然色ワイド『人肌牡丹』に出演し、話題をまいているが、さる十二月十一日、ちょうど二十七回目の誕生日を迎えた。

 ミス日本から大映入りし、昭和ン二十八年『花の講道館』でデビューし、この十二月で満二十七歳になったわけだ。たまたまこの日は『人肌牡丹』の、それも追い込みの急なセットが待っていたため、例年どおりのパーティーはできなかったが、それでもお富士さんは上きげん、なんとか形だけでもと共演の市川雷蔵、岸正子、三田登喜子らがそろえた小さなバースーデーケーキを前に、「ええ思い出になるわ」と映画ではちょっとみられないはしゃぎぶり。ケーキを数十来に切りわけ、三隅監督以下居合わせたスタッフ連に一つ、一つくばって歩くなど、大スター山本富士子をすっかり返上した一日を送り、「これを機会に来年はもっとやろう、そんな気持です」とはやくも新年の抱負をもらし、日本一といわれるこぼれるような、微笑をうかべていた。

 

 

西スポ12/25/58