六月十五日
昨日からの疲れに不覚にも寝すごした今日は、所内野球が行われ、雷さんは確かに十時から出場すると聞いていたが、でも昨日は三時頃までお仕事だし、十時といっても始まりっこないからと、のんびり太秦小学校へ出掛けて行った。所が所がである。行ったら試合は終って、今撮影所へ帰ったという事である。遊ぶ事になるとだれでも早起きするのかな?・・・といいながら撮影所へその足で飛んで行った。
正門の所で、丁度家へ帰る雷さんにばったり。話によると、雷さんは監督。勝負は大変見事な負け方だったそうです。雷さんの背番号は20番でした。その日はこれから食事をして、嵐山へ行くというので、そこでお別れした。ここで面白い話を二つしましょうね。
怪我の功名の事
『七番目の密使』撮影中、雷蔵さんが落馬されて怪我をされた事はすでに御存知ですが、目のふちのため、包帯を巻けばおおげさになる、といって治療しないわけにはゆかず、そのため赤チンを用いたそうで、全快するまでかかった費用は二百円也!!でもこの傷のおかげで?で『炎上』で放火する場面は大変迫力が出たそうです。
シワにもよりけりの事
『女狐風呂』におなじみの堺駿二が下っ引きで登場したが、最初のセットで新しい羽二重をつけて出たところ、羽二重がなれていないため後方でシワが出来て、少しうつむくとそのシワが見えるので、安田監督が「大体脳にシワの多い人は知的に優れているんですがね」といえば、思った事をいわずにおれない人、雷蔵さんがすかさず「いや脳にシワのある人は賢いと聞いていますが、頭にシワのある人は初めてですヮ」で、堺さん「何をッ!」
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