映画スターの人気は容姿躰体の美しさもあるが、何といっても演技が売りものの稼業であるから、芸風の確かさを見せないと人気も永続きがしない。京マチ子、淡島千景、音羽信子、久我美子、佐田啓二、三船敏郎、鶴田浩二、三国連太郎・・・など戦後派スターといえども数多くの問題作に出演、浮ついた人気でなく、いずれも手堅い人気を持っている。 二枚目として登場して、二年たっても人気が出ないいようなら、スターとしての第一の資格を失うも同然といわれるが、ちかごろ新進として人気を集め、芸風演技の確かさを示しはじめた新人たちをひろいあげ、明日のスター群像を描いてみよう。 　すでに新進ではないが、美空ひばりが五所平之助監督の『たけくらべ』に主演、唄姫でなく映画女優としての存在を示そうとしたのも話題に上ったが、この作品では美空ひばりの演技力は、その評価をがらりと変えてしまうほどの出来栄えではなかったとみられ、本人も演技一すじにという野望はまだまだ時を経てからと自覚したようである。しかし演技巧者な女優の可能性を示したことは認められていいだろう。 　このほか、松竹から日活入りしてメキメキ人気を上げて来た北原三枝は、ようやく内田吐夢監督『自分の穴の中で』によって話題作に登場しており、宝塚から同じく日活入りした新珠三千代は市川崑監督の『こころ』で中年になろうとしている妻を重厚な味で演技してみせ、将来を楽しませてくれている。また八千草薫は日伊合作『蝶々夫人』によって世界に紹介される機会を掴んだが、『宮本武蔵』『三四郎』などではまだ実力を示すまでにはいたっていない。 　続いては若尾文子、司葉子、嵯峨三智子、安西郷子、野添ひとみ、中原ひとみなどがいるが、いずれも話題作の主役を掴むにいたっていない。