雷蔵さんと共に舞台に立って
雷蔵さんとは、映画『鳴門秘帖』で御一緒致しましたが、其の後の御縁がなくて御一緒にお仕事する事がございませんでしたが今度思いがけなく、大阪新歌舞伎座の舞台で御一緒する事になりまして、歌舞伎から映画へと進まれた雷蔵さんに、片や歌劇から映画へと歩みました私ですし、何と云っても舞台経験も浅い私は、最初はどうなる事かと心配しておりました。でもさすがに映画でも現代劇、時代劇共、いいお仕事をなさってる雷蔵さんの舞台、見事なものだと感心致しております。今度の舞台が丁度現代物、踊り、時代劇とすっかり内容の違ったものだけに、やはり歌舞伎で基礎を積まれたのがものを云うと申しますか、それぞれに立派に演じられて、昨日、今日始めた者には出来ない事だと感じさせられております。
「今度一度だけ」などと新聞でおっしゃっておりますが、そんな事を云わずに、映画のお仕事の一度を舞台の方へ、それで映画と共に舞台にも意欲をもやして頂きたいものです。
後半に入った此の頃は、忙しい早替りにも自然と余裕も出来て来た様ですし、恐らく雷蔵さんも演技者として再び舞台に魅力を感じていられるだろうと想像いたしております。
“ぼんち”は映画も舞台も当り役で本当におめでとううございました。雷蔵さん御自身も此の上共“ぼんち”の様に気根性のある役者になられる事を大いに期待いたしております。
健康の都合でやむを得ず時代劇だけ降りさせて頂きましたが、出して頂いていたら寿海先生も御一緒ですしとても勉強になりましたと思っております。
けれどお蔭様で健康もほぼ回復いたしましたし、暑い夏を楽しいお仕事で過す事が出来まして喜んでおります。雷蔵さんも余り頑丈でないお体らしいので良いお仕事を長く続ける為にくれぐれもお体に気をつけられます様今後の御活躍を期待しております。又機会がありましたら楽しいお仕事を御一緒にいたしましょうね。
(よ志哉19号より)