“弁天小僧”が出来るまで

写真は大映京都撮影所の化粧室で

 時代劇にはイレズミがよく出てくる。白黒映画でイレズミを描く場合は、ドーラン鉛筆でハダへ描けばよいが、色彩映画ではドーランを揮発油でとかしながら筆で描く。

 “弁天小僧”のイレズミは一般にサクラなのだが、色彩フィルムのため朱が勝ちすぎるおそれがあるので、青の勝ったキクの図案にかえた。描く人は東映で千恵蔵びイレズミをもっぱら手がけている尾上華丈さんだ。

 胸から背中、両腕、両足にかけて全身のイレズミだけにすっかり仕上げるのに三時間かかる。描きあがると、その上からパフで白粉をたたいて押さえておくのだが、衣裳をつけると絵がすれてしまうので、撮影直前にやらなければならない。そのあとメーキャップにほぼ一時間かかって、雷蔵がはじめて女装した“弁天小僧”が出来上がる。(10/15/58)