好敵手を語る 

-大衆に愛されるスター

 雷蔵さんは関西歌舞伎で僕は東京と、所属こそちがえ、当時かたよく知ってはいましたが、映画に入ってからの彼は、特に最近は、舞台の頃とは全く別な感じを与えています。素顔の時は一見して弱々しそうに見えるのが仕事の上では、闘志が溢れて、積極的にどんどん進めていっている。その辺に、ふっきれたものを感じます。

 雷蔵さんが魅力ある俳優であることは、僕がとやかく云うまでもないことですが、いわゆる二枚目とは違った持味の人だと思っています。長谷川一夫さんなどは典型的な二枚目スターだと、僕は思っていますが、そういった二枚目の魅力だけではなしに、そこに新しい何かが加わっているのです。なにが彼の魅力はというと、一口には云えませんが、その新鮮さと力強さにあることはたしかです。作品の内容にかかわらず、いつの場合にも、人間雷蔵とでもいった、いきいきとした人物が、画面に写し出されているところに、これまでの二枚目ではない、新しい魅力があるのです。

 演技も積極的なら、出演作品も積極的に、どんどんやりたいものをやっていくところなど、考え抜いた末でないと行動に移せない僕とまったく対称的です。その積極性とでもいう処世態度も昔のことは知りませんが、ただがむしゃらに、無理押しに押し通すのではなくて、周囲の事情も考慮した上でのことなんですから、「炎上」のような、一見無謀にも見える冒険を、会社をも納得させて撮ることが出来たのでしょう。雷蔵さんとは同じ世代の俳優である僕から見れば、うらやましいの一語に尽きる仕事っぷりです。

(「時代映画」昭和34年7月号より)