住の篇
所在地 京都市右京区鳴滝音戸山町四番地
敷 地 五百坪(うち三百坪は裏山)
建 坪 母屋(二階建)七十五坪、離れ三坪。
間 数 一階・八畳の居間、六畳の茶室に、六畳二間、三畳一間、さらに玄関三畳、控の間四畳半の七室。別に六畳の台所、風呂場、洗面所など。
二階・十畳の寝室に四畳半、二畳の三室。
離れ・もっぱら物置き納屋として使用。
外 観 杉の板塀で囲まれた純日本式家屋。
内 観 もともと住宅用として建築されたものでなく、お茶人さんが別荘として建てたものを買われたので、家全体が何となく茶室風に風雅な趣きをたたえています。家中どこへ行ってもすべてが整然と配置され、いかにもご主人の性格を現わしたよう端正な感じです。裏山に面した西側には、八畳の居間と続きに巾一間半の真新しい廊下があり、赤いジュウタンが敷かれていますが、ここにはテレビ、電蓄、レコードケースなどのほか、ファンから贈られた人形を入れる大きなガラスのケースが人目を引きます。

各部屋にはそれぞれ立派な調度品が配され、また季節にふさわしい掛軸、生花など美しい色どりをそえていますが、居間にはぎっしりつまった本棚があり、雷蔵さんがおとりになった吉川英治さんの「新・平家物語」も全巻揃って収められていました。
建築年代 正確にはわかりませんが二十年位以前のもの。
環 境 京都でもずっと西北の外れ、市の中心部から車で二、三十分、撮影所からなら僅か十分足らずというところですから、お仕事には大へん便利な場所です。
近くを通る交通機関は市バスと嵐電北野線がありますが、仁和寺街道とよばれるアスファルト道路を左に切れて坂道を下りて行くと、どちらを見ても樹木ばかりに囲まれた閑静な住宅地が目にうつります。附近一帯は高級住宅地や別荘が点在してその豪華さを競っているとでもいった感じです。もち論隣近所とはおよそ行き来がないので、一軒一軒が全く孤立していて名前もお互い知らないということが多いそうです。
位 置 東向き
裏山と庭 百坪余りの庭園に囲まれた母屋は、どの部屋からも庭が眺められるようになっていますが、西の方は裏山と続きになって、時折散歩にかけ登って行かれるそうです。
庭には梅、紅葉、松、つつじ、南天、ぼたんなど各種百本余りの木が思い思いに、しかもそれぞれ所を得て配置され、一しお美観をそなえていますが、小さな池に放してある鯉や金魚は、時折山から蛇が出てきて食われてしまうのでとご主人は嘆いておられました。
また裏山には山桜をはじめ、柿、栗、ビワ、みかんなどもあって、季節にはその収穫が待ち遠しいということです。そのほか、雀、烏の類から山鳩、鶯にいたるまで、ありとあらゆる種類の鳥が来て、毎朝奏曲を奏でてくれるのも他の場所では見られない風景だとか、時には名も知らないような極彩色の鳥まで迷い込んできて驚かせるそうです。
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雷蔵さんがここの住居に引越してこられたのは、三十一年の夏で、それまでは山田五十鈴さんから買われた大将軍のお家に二年ほど住まわれたころがあります。今ではすっかり新居にも馴れて、日々元気一ぱいの生活が続けられていますが、この清純な空気に包まれた閑静な住いが、あわただしい映画のお仕事から雷蔵さんを隔離して、憩いの一時を与えてくれる最善の場所でもあるわけです。(映画ファン58年2月号より)