みんなで夢を作ろう

−「初春狸御殿」−の撮影の前に

雷蔵 まず云えることは、とにかく楽しいね。狸御殿というのは・・・

 本当だ。僕なんか子供のころ、狸御殿といえば、楽しみに待っていた番組だったからな。

若尾 木村(恵吾)先生にお伺いしたら、最後の狸御殿から、十年ぶりなんだそうですね。

雷蔵 ぼくらはみんな十代だったわけだ。

若尾 今度はカラーでスコープなんだから、本を読んでいて、その美しい画面が目に浮かんで来そうよ。

 それに今度は、雷ちゃんも若尾ちゃんも歌うんだろう。

雷蔵 映画でうたうのは初めてだけれど、僕のかくれた才能を披露するチャンスだ。(笑)

若尾 雷蔵さん自信満々で。勝さんは本職はだしだし・・・、私は歌や音楽は聞く方は大変好きなんだけれど歌う方はヨワイのよ。でも、今度は明朗篇ですから、割り切ってのびのび浮き浮きと歌うつもりよ。

 鴈治郎さんも歌ったんだってね。

若尾 えゝ、この間、多摩川で家老狸右ヱ門の歌を吹き込まれたのですが、小学校以来初めてなんですって、歌ったのは・・・

 歴史的だね、これは(笑)

若尾 それがね、私も偉そうに云えないけれど、とにかくみんな大笑いなのよ。伴奏とゼンゼン合ってなくって(笑)ところが音楽の吉田(正)先生がとても喜んじゃって、その外れた味が却っていい(笑)一ぺんで木村先生のOKになったのだけれど、かけ合いで歌う楠木トシエさんの笑いが止まらなくって、なかなか本番にならなかったほどよ。

 玉緒ちゃんに聞いたら、お父さんが京都へ帰って来ると、早速家でみんなの前で歌ったんだって。

雷蔵 自信満々だな、これも(笑)

若尾 とにかく、私たちのはお愛嬌だけど、本職の一流歌手がワンサと歌って踊るんだからその方で堪能していただくんですね。