このごろのスターの結婚ばやりに彼も「僕もそろそろお嫁さんをもらわにゃいかんな」とあたりの人たちを煙にまいたいりするが、「同業者は、結婚相手に選びたくない。家で仕事の話はしたくないんだ」というのが信条だ。週刊誌などで、金田一敦子や小野道子らとのゴシップをとばされると「こんどは誰の番や。僕の知らんうちに相手をそうかえられたら忙がしいかなんな」と、すっとぼけて笑いとばす。

 彼の好む女性のタイプは市川和子のような近代的で明るい、可愛い女の子ということを前に聞いたことがある。彼を知る人は、会社では「やんちゃ坊や」、会社の外であうと「紳士」、家に帰っては「物静かなぼんぼん」と、いっているが、結婚相手であってはいけないし、彼もそうは望まないだろう。やっぱりぼんぼんのわがままを、ふんわり温たかく包んでくれる明瞭で素直なお嬢さんが彼の妻の座に坐る人だろう。しかし彼の様子では、いまのところ仕事以外に結婚のことなど考える暇もなさそうだ。まず当分はお預けといったところだろう。

 二十九年八月『花の白虎隊』でデビューしてから満五年、撮影中の「かげろう絵図」が六十三本目になるが、『大阪物語』や『炎上』あたりから演技的にもハッキリと充実してきたことが伺える。彼自身も自信がついてきたようだ。唯一つの現代劇『炎上』でブルー・リボン賞をもらったことでフロック(註:玉突きで、玉がまぐれあたりすること。まぐれあたり。)といわれることを情ながって、秋の『ぼんち』で実力を示そうと意気ごんでいる。

 また念願の『好色一代男』の増村保造監督のメガホンも決って、今秋こそ彼にとっての大きな試練の時期といわねばならない。ウエットな近松よりも、ドライな西鶴にこそ近代性があると頑張る彼の成功を祈りたい。勝新太郎とよく対照させられるが、勝の器用さに対して彼は努力の人だといえる。そういう努力が「坊ちゃん」の熱血的な気質の上で大きくはばたいてくれるこのを期待しよう。

(週刊大阪映画演劇第3号より)