真夏の京都に市川雷蔵さんのお住居を訪ねると、
「なにしろ、大役なんで間誤付いています。原作が原作だけになかなか難しいんです」
宣伝スチールでみると、おとなしやかな顔に太い眉毛をつけて、馬鹿に強いメーキャップをしている雷蔵さんの清盛だが、こうして逢う雷蔵さんは逆で、むしろ非常に線の細い感じだ。
「メーキャップとして、ずいぶん思い切ったものですね」と、いうと、
「ええ、昔のあの頃の青年清盛の逞しさを表わすために、ああしたのです。なんだか、初めは自分の顔でないみたいで困りましたよ。でも、今はもうあの顔が自分の顔みたいになってしまって・・・」と、にっこり笑う。
「毎日どうお暮らしですか、ひとつ読者に、雷蔵さんの一日といったものを紹介したいのですが・・・」と、いうと、
「朝起きて、スタジオへ行って、たいてい夜おそく帰って、すぐ寝てという具合に、とにかく平凡この上なし・・・毎日そんな繰り返しで本当に自分の時間さえないといった所です−」
いつ、どの俳優さんに逢ってみても、たいていのスター商売は忙しくて、むしろ普通の世間の人たちの方が日常生活をエンジョイしているものではないだろうか。
「じゃあ写真を撮りましょうか。僕の生活はこんなものですよ」と、
気さくに立ち上がって雷蔵さんは、スター生活の一日二十四時間をさつさつと実演してくれたのです。
忘れてはならない雷蔵さんの日課がふたつありました。一日の平安を祈る神棚へのお祈りとファンレターを読むのが日課です!
夜、それはまた映画の勉強の時間、明日の撮影を思えば、台本をまずとり上げます。
朝起きて、仕事をして、宿へ帰って、寝て・・・この様な生活をする雷蔵さんですが、超大作に主演する彼は、こんな生活にも張りを感じて張り切っています。