なんでも宣伝部が悪くなる!

司会: 作品は宣伝を担当する人が決まっているわけですか。

人見: 決まっています。

小木下: そうしますと、担当する人が宣伝方法というか、宣伝方針の枠内で宣伝をしていくわけですか。

人見: ええ、ジャーナリスト対策は林君がやっていて、新聞、雑誌の広告は別の人がやっているわけで・・・担当している人の所に相談はしに来ますけどね、そうした広告も各社申し合わせになっているんです。

司会: 封切前に出す広告はですか。

人見: ええそうです、今は封切日がまちまちですか、だいたい各社が割当になっているんです。プログラムによっていつ出すかは各社で考えますが、撮影開始、完成近しとかね、これで間に合ないと大変損しますしねェ、全予算が一千万とすればこれを各ブランチにわけるわけですからねェ。

角田: あの、映画の題名ですねェ、あれは宣伝で決めるんですか。

人見: 製作以前のプロットの時に審査して、これを本社で首脳部が集って検討する。例えば雷蔵のはこれで行こうと決まるわけです。特に悪いのがあると「宣伝で考えろ」といわれる。そこで僕が林君達に「考えておけ」(笑)となるわけで、それで集ったものを永田専務が見、社長が見て決める。「青葉城の鬼」は社長がつけた題名で、始めは原作どおり『樅の木は残った』であやることになっていたんですよ。

小木下: あの方が良かった様ですね、『青葉城の鬼』なんて・・・。

伊奈川: 原作を読んでいらっしゃらないんじゃないですか(笑)原作を読んでいればああいう題はつかないと思いますけど・・・。

角田: あの感覚はねェ、一寸・・・。

人見: 宣伝部でもいろいろ提出しているんですよ・・・。

林: 貴女方の質問を聞いていますと、宣伝部の守備範囲じゃないところまで宣伝部の責任にされている様ですねェ。

司会: つまりこちらは何も知りませんので、なんでも宣伝部が悪いと云う事になってしまって、どうも・・・。

人見: そりゃ、責任は十分に感じますが・・・。

伊奈川: 大作、例えば『釈迦』等は違いますが、普通の作品は宣伝機関はどの位ですか。

人見: それは作品が決まったら息をつかせずにスタートするわけです。プロットのうちから宣伝は始まっている。

司会: 宣伝部は苦労しますねェ。

人見: そう、一番苦労しますねェ、ゆとりがないんでね。

角田: 俳優さんがたりないからですねェ。

人見: 絶対数がね。

伊奈川: でもいい時は新聞に出ないで、悪い時ばかり出ているんで気をもんじゃうんです。

人見: この所、雷蔵さんのものは入っているんじゃないですか。