テレビとゴシップ
人見: 以前は地方でうけるものと別れていましたが、今はテレビの影響でだいぶ都会的になって来ましたからね。
伊奈川: テレビの話が出た所で、私はなんと云っても映画は完成されたものだと思うんですよ。テレビは手軽ですから今はテレビにおされていますが、いつかは映画に帰って来ると思いますから、気長に待って。(笑)
人見: 気長じゃいけないんですよ。
伊奈川: 映画はいいんだと知らせてほしいですねェ。
人見: うちの社長はなんと云っても映画だとう自信をもっているんですよ、ですから、問題はお客を家庭から映画館に引っ張り出すという魅力のあるのを出すという事ですねェ。
伊奈川: ですから、もっとテレビを利用したらいいと思うんです。
小木下: 今は映画の紹介が少なすぎますね。
人見: テレビの利用はおろそかにできません。我々の方でも次々に手を打っております。
小木下: 大きい広告を一つの新聞に出すより、小さいのを各新聞に出した方がいいんじゃないですか、ゴシップなんかもね。
林: 記事面でね。
小木下: ええ、でもゴシップと云ってもあまりマイナスになる様なものは困りますけど。
人見: それも話題が多いか少ないかによって、だいぶ違いますけどねェ。
角田: 宣伝しなければ売れないものは一生懸命やっていただきたいですね。『秦・始皇帝』の様な一寸だけだせば飛びつく様なものよりは・・・宣伝の技術というんですか。
人見: 宣伝マンが苦労するのはなんと云っても時代劇ですね、山本富士子が母親役をやるというと飛びつきやすいけど、雷蔵さんが美剣士をやるというと、そのものは魅力があっても記事としてはむずかしいですよ。
角田: 今までもやって来たし、珍しいものではないし。
人見: だから雷蔵さんが『破戒』をやればわっと飛びついて来ますよ。
角田: 時代劇の場合は題名で相当違いますねェ。例えば『斬る』なんて斬新でいいですね、今度やる『忍びの者』というのは宣伝しやすいんじゃないですか。
人見・林: ええ、いいですね。
林: 雷さんの映画はありきたりの時代劇の場合、まともな取り上げ方はむずかしいですョ、宣伝面でね。そういう時にお願いしたいのは、雷蔵さんの協力なんですよ(笑)つまり雷蔵さんの魅力におんぶして作品を売るわけですからね。