われらはスターの親衛隊

スター後援会座談会

 ファンをひきつける映画の魅力の大きな部分をしめているのはスターというものの存在である。サイレント時代の昔からスターはスクリーンのアイドルとして観客大衆を魅了してきた。スターの存在を無視しては映画をかたることはできない。

 そのスターを支持する映画ファンの代表ともいうべき、スター後援会の熱心なメンバーに集まってもらって、一夕自由な放談会をひらいた。

 ごひいきスターについて、映画について語るこれらの発言から、純粋な映画を愛する人たちの声を聞きとっていただきたい。

後援会の楽しさ

双葉 家に遊びに行ったりするということはないんですか、雷蔵君なんかの場合。

阿部 家に遊びに行くということはないですけれども、これも後援会の行事のなかの一つで、年に一回全国の会員が集まって京都の撮影所見学をすることになっています。天竜寺というお寺を一晩だけ使わせていただいて、会食し、その席で雷蔵さんがお話をします。その帰りにちょっと雷蔵さんの家に寄っていくという人もあります。雷蔵さんが一風変っていますので、会員さんの方にもその考え方が浸透していて、私生活の方にタッチするという人はいないわけなんです。とにかく、後援会というのはただ後援するだけではいけないと思うんです。人間的に向上をはかっていかなければ意味がないんじゃないかと思います。

双葉 後援会をやっている以上楽しいからやっているんでしょうけれども、どういうところが楽しいの。旭君の場合はどうですか。

田崎 旭の映画を見るにしても、自分一人で旭とスクリーンで会うよりも、ファン同士で話相手あってスクリーンで会ったほうが、いいというんで、丸の内日活で周期的にやっているわけです。一回に二十五、六人ずつ集めてやるのです。それで話合ったことを僕たちが書きとって旭に言うとかね。そういったことがいちばん喜ばれています。お花見の時期になれば、お花見に行ってみんなで話し合うとか。

双葉 それは結構楽しいですね。錦ちゃんの場合はいちばん拡がりが大きいから、他の皆さんと比べて変っている点があると思うけれども。

池沢 入会された方というのが映画で見る錦之助だけでなく、錦之助さんの人柄とか、演技に対する熱意、そういったことにひかれて入っているわけなんですね。一ヶ月に一回くらいグループ集会をして、その意見を親睦会でまとめたのを錦之助さんの耳に入れるわけなんです。錦之助さんはたいへん熱心に聞いてくれます。会員さんを大事にしてくださるんです。

双葉 雷蔵君には意見など言うんですか。

阿部 雷蔵さんに言う意見というのは、作品の上での意見です。それほどこまかいことは言いませんね。

双葉 彼と議論したらたいへんだものね。

阿部 とことんまでご自分が納得するまで、相手が困るまで言うそうですから、言わない方がいいらしいんです。

双葉 文学青年が出ちゃうね、しゃべりはじめると。

阿部 そういうふうに納得いくまで質問して下さるということは、それだけ相手を信じていっていることで、たいへん嬉しいことだと思うわけなんです。その生真面目な感じというのが、映画に出てるんですね。しれが好きだという方が多いんです。

双葉 そういう意味じゃほんとうに真面目だな、彼は。

阿部 撮影所は自分の仕事場だから、仕事を理解してくれるのなら遊びにきてはいけないというんです。

双葉 気ちがいじみたファンというのはいないのかな。後援会のなかのすごく熱心なファンで、いろいろ珍談めいたことがあったら・・・。

阿部 熱心な方はどこの会でもいらっしゃるんじゃないかと思います。でも、そう特別にめずらしいという方は、どこの会にもいらっしゃらないんじゃないかしら。

双葉 スターの持物をかすめてきて集めるとか、そういう人はいないかしら。

田崎 ブロマイドを集めて、そのブロマイドにサインがないのはいやだといいますね。

村山 津川さんは、どんなにお仕事が忙しくても徹夜でサインしてくれます。津川さんの出ている作品は、会員さんはほとんど持っていると思います。

双葉 作品数だけね。

田崎 写真だけじゃなくて、切り抜きが多いですね。雑誌に旭の顔や旭という活字があると、みんな破っちゃうんです。

村山 最近のファン・レターに、そのスターの名前を沢山書いてくるのがはやっているのじゃないですか。二、三枚の便箋に端から端まで津川雅彦とぎっしり書いてあるんです。

双葉 文章を書かずに?

村山 ええ。とてもいまはやっているらしくて、私たちの会だけじゃないらしいですね、聞くところによると。

双葉 津川雅彦なんて字画が多いからたいへんだね、小林旭だったらわりと書きいいけど。それから、スターのファンとして会社のやり方が気にいらないとか、いろいろあると思います。こういう写真を作らしてやりたいのに会社が作らしてくれないとか、そういう不満というか、希望というものを述べていただきたいんだけれども。

村山 ファン全部の方がどういう作品をということはよく分りませんけれど、私自身としてはやはりヌーベル・バーグといった作品は見た感じがいいとは言えないと思うんですが。けれども、いま津川さんが一生懸命演技派としてやろうといているときには、ああいった役も、ひと通りこなさなくちゃいけないと思います。

池沢 錦之助さんは一年に一作でもいいから、自分の納得のいく作品を撮らしてほしいと言っておられました。欲をいえば本数をもう一本ぐらいへらしたいと。

阿部 でも、本数はどこの会員さんでもできるだけ多くということを希望していますね。

双葉 いい映画に出てもらうために一年に六本でも我慢しようというよりか、普通の写真でもいいから、十二本見たいという気持かな?

阿部 ええ。それでやはりそのうちの一本ぐらいは印象に残る作品をという希望です。

池沢 納得のいく映画を一年に一本でもいいから、立派な作品だけ見たら、それでいいという方もおられますし、それからまた、どんな映画でもいいから、ひと月に一回は見せてもらいたいというファン、そういう方もおられますし、いろいろですね。