われらはスターの親衛隊
スター後援会座談会
ファンをひきつける映画の魅力の大きな部分をしめているのはスターというものの存在である。サイレント時代の昔からスターはスクリーンのアイドルとして観客大衆を魅了してきた。スターの存在を無視しては映画をかたることはできない。
そのスターを支持する映画ファンの代表ともいうべき、スター後援会の熱心なメンバーに集まってもらって、一夕自由な放談会をひらいた。 ごひいきスターについて、映画について語るこれらの発言から、純粋な映画を愛する人たちの声を聞きとっていただきたい。 |
映画をもっとおもしろく
双葉 後援会に入っておられて、映画界や、スターの扱い方について希望やご意見がおありと思いますが。
田崎 テレビがこんなに隆盛になっている時代ですから、会社としても一人位両立させて働かせてみたらどんなものでしょう。テレビの人気はすごいですから。
村山 松竹は宣伝方法が下手ですね。小林旭さんなんかの映画をみると、ここぞというところで歌を歌わせるとか、アップにするとか、効果的で実にうまいですね。松竹もすこし勉強して欲しい。
双葉 せっかくの役者を殺してしまってはね。
村山 津川さんなんか、もっと売り出していいと思います。
双葉 日活にいたら、完全にダイヤモンド・ラインの中軸だな。
田崎 そうですね。
池沢 私なんか錦之助さんとよく話をするのですが、いつも今の映画界で仕事をされるということに同情してしまうのです。
双葉 人使いが荒いということですか。
池沢 フィルムを惜しまずに、何カットでも撮って、その中からいいカットを生かすとか、一年に一本ぐらいを悠々と撮るといったことは出来ないんでしょうか?
双葉 雷蔵君はどう?
阿部 私たちは永田専務にいろいろ苦情をいいますが、何しろあちらはその道のベテランですから、スラッと聞き流されてしまうことが多いんです。会社ももっと私たちの意見というものを聞いていただきたい。
双葉 本当ですね。
阿部 今はテレビでもなかなかいい作品がありますね。映画も何でも作ればいいという時代じゃないと思います。それには製作会社がもっと共存共栄を考えるべきでしょう。スターの他社出演なんかをどしどしやって、私たちの夢を実現して欲しいですね。入場料も、もっと安くならないものかしら。いくら好きな俳優さんが出てるからって、毎週毎週見に行くわけにもいきませんからね。映画会社が根本的な問題を考えてくれないのでは、私たちの応援のしがいがありませんもの。
双葉 一本見るのに二百五十円だものね。
阿部 我々のように後援会に入っている人たちは、映画を実にたんねんに見ると思うのです。粗製濫造による作品のアラなぞは一ぺんに見破っちゃう。アラが気になると、したがって主役が引き立たない。そうなったら、お客はだんだん遠ざかってしまう。
双葉 永田さんには、どんあことを直談判したんですか。
阿部 会報に掲載する座談会をやったら、あまりにたくさん大映に対する注文が出てきて、さばききれなくなったんです。そこで我々のうちで代表を選び、大映で責任ある回答を聞くために永田さんにお会いしたのです。専務としては社長を全面的に信頼されているし社の方針というものを真っ先に考えられている。その時には簡単に引き受けてはくださいましたが、まだまだ実現されていない問題が多いですね。
双葉 たとえば、どういうことですか。
阿部 料金引下げの問題、一本立の問題、宣伝期間が短いということ、要するに計画性がないということでしょうか。私たちとしてはそうとう突っ込んでいったわけですが、大映は封切の組合せが悪いですね。『沓掛時次郎』の評判がよかったから、すぐに『鯉名の銀平』を出すなんて能がない。どこか製作態度に投げやりなところがありますね、大映は。まあ会社には会社の理由があるんでしょうが。
双葉 タダでみられるテレビがあって、お金を取る映画がつまらなければお客は来ないに決っている。それをお客が来ないと嘆いてるだけでは困ったもんだ。
阿部 最大の努力をした結果、お客が来ないというならまだ救われもしましょうが、まだまだ最大の努力をしていないような気がしますね。今の映画界は下火なんじゃないですか。
双葉 お客さんの言うことをきかないからね。(笑)
池沢 映画館にしても指定席で冷暖房がよくきいていて、それで映画がすごく面白いとかいいものなら、お客さんはどんどん来ますよ。興行面でも考える点が多いと思います。宣伝に関しては東映もあまり上手ではありませんね。
双葉 製作本数がふえてからひどいですね。
池沢 『用心棒』と『宮本武蔵』なんかでも、ずいぶん開きがある。日活、東宝はうまいですね。
双葉 日活のハッタリ宣伝はうまいからね。
田崎 あれでいいんじゃないですか。
双葉 写真の性格にはぴったりしてるもの。
池沢 全作品は宣伝してないようですね。
双葉 東映でもそうだけど、本数が多いから、とっても全部には手がまわらない。となると二本立の問題になってくるわけですね。
阿部 そうですね。
双葉 皆さん二本立を見にいって、お目当てのスターのものじゃないのをやってるのを、見ますか。
島田 私はいっしょに見ませんね。
双葉 帰っちゃいますか。
島田 すぐ帰っちゃうわ。先ほどもおっしゃられたご意見の中にありましたが、あるスターのファンというのは、その所属する会社のファンだと思うのです。それがたまたま他社に出演した作品のほうがいいのでは困ります。
双葉 他社出演は脚本にしてもいいものを選ぶし、俳優さんの心構えも違ってくるでしょうから。
島田 無理な注文でしょうが、一年に一本でもいいから、すごく感動出来るような作品に出て欲しい。良心作を作って欲しい。
双葉 もともと日本の映画界には、お客をだますという観念がある。こんな程度に作っておけばいいとかね。ところが今の時代はもうやっていけなくなった。
島田 作品がいいと、スターまでよくみえますね。『誰が為に鐘が鳴る』のクーパーなんか、すごく感動した経験があります。これも経営者側の考え方の一つで、どうにでもなるという問題じゃないですか。俳優さんの演技力の向上という点でも、テレビでも芝居にでもどしどし出すべきでしょうね。
双葉 いろいろと、有意義なお話をうかがいましてありがとうございました。ではこのへんで。