花束に秘める思い

二年たった。

私の居間にも、撮影所の十四号室にも、彼女の贈り物の数がふえていった。テーブル・クロスから手製の人形、夏には涼しげなゆかたまで送られて来た。K子の真心は、いつしか私の生活の一部になりはじめていた。ほのぼのとした愛情が私の胸の中に燃え、恋に変っていったのは、確かにこのころだったと覚えている。

それなのに、私はまだK子を知らない。一度はマネージャーの森本に、彼女の家に電話を入れさせたこともあったが、私の名を言っただけで、電話はプッツリ切られてしまった。

「姉さんとの約束がありますから・・・」

K子は不思議な女性である。

だが、私は。彼女の気持は尊重してやりたいと思った。機が熟せば、運は自然に向いてくるものだ。「愛情の問題」は急いではならない。愛することは手間がかかるし、忍耐力のいる仕事なのだ−私は、私自身に言いきかせて、K子を結婚の対象に考える時、不思議と満足な幸福感に酔いしれるのだった。

K子からの手紙が百通を越し、百五十通を上回ると、月日は夢のように流れ去っていた。

この間、私は慢性の胃病をわずらって上京、T病院へ五日ほど入院したことがある。

K子の叔父が関係しているとかで、彼女が紹介してくれたのだが、そのくせ、K子は一度も病院を訪れてはくれなかった。ただ、毎朝同じ時間に、かおり高い美しい花束が、きまって看護婦さんの手で持ち込まれて来た。もちろん、贈り主はK子である。

付添いの看護婦に、そっと耳打ちして頼んでも、K子と顔を合わせることはできなかった。

「美しいかた、雷蔵さんの恋人かしら・・・」

そんなウワサを、私はベッドの上で夢うつつに聞いたことがある。