映画産業、斜陽化の声が、大きく言われている現在、京都の場合はどうか。

 松竹、大映、東映と、在洛三撮影所の現状について、身近に見ている映画記者四人の方に、忌憚のない、率直な意見をきいた。

 

 大 映 京 都

B 勝新太郎が、『不知火検校』以来、自分のスタイルを作った。これによって、大映京都作品の企画に新鮮味が出て来た。

D 新鮮味と、企画の幅が出て来た。これは大きな収穫だね。

D 今までには、長谷川一夫、市川雷蔵が第一線に出て、勝の場合、正直にいうと、二軍的な存在だった。

A そう、ただ立ち廻りがうまいだけというようなね。

B 新兵さんがきたえられて、一人前になって来た感じで、『不知火検校』以来、『釈迦』でも好演だったし、また『悪名』シリーズも、自分のものにして来たというのは、大変な収穫でもあるし、また、大映京都の主軸的存在にもなって来たわね。

C 興行的でも『悪名』はベストファイブに入るし。

B 『不知火検校』のような、企画が勝負するというのは、東映また松竹とじゃ違った根性が会社なり、勝ちゃんにあると思う。『不知火検校』にしろ『座頭市物語』にしろ、めくらが主人公なんていうものは企画にとり上げられるような作品じゃない。そういう企画を、あえてとり上げて勝負するというところが、大映の魅力だと思う。

C 勝ちゃんは、いわゆる二枚目スターという看板を返上して成功したという感じだ。

A 非常に体臭の強い、匂いがぷんぷんするという俳優でしょう。勝ちゃんというのは。

D 彼は、男前だし、本当に綺麗な二枚目スターなんだけど、それを一度捨てた。

A それは、大映の企画の成功と言えるだろうね。

D その点、永田社長は、口をすっぱくして、一に企画といってたでしょう。それが実証されたわけで、立派だと思うね。

B 俳優を企画の中で生かし、それで勝負する方向を打ち出さなくてはね。大映は現代劇の方が頼りないしね。京都でそういう作品を、二月に一本でも、三月に一本でも出して、それに現代劇をからまして行く。企画で勝負するという段階にあると、一番恐い存在が大映なんだ。

D 大映は、先のこれはとりますという作品は、きちんと決めてあるでしょう、あれは立派だと思う。

C 僕が不思議に思うのは、大映の場合、大人向きの、いい企画が出てくるかと思うと一方では、番組補充用にいるかも知れないけど、チャチなのを出てくるでしょう。

A アンバランスですね。たとえば70ミリ『釈迦』みたいに、立派な作品を作るかと思えばね。時代劇はスターシステムだと言われるけど、スターを生かす企画というのを、もっと考えたら、まだまだ面白いものが出来ると思う。

B 異色的な企画は、大映が一番積極的だよ。