「大菩薩峠」でボリュームを!

「おけさ唄えば」が終ると次は去年からおなじみの「大菩薩峠」の第三部に入ります。

ぼくの演ずる机竜之助も、二本、三本と回を重ねるに従って、いよいよその核心に近づいてきたような自信に似たものが湧きつつあります。ですから、今度は宣伝文句ではありませんが、ますます冴えた盲目の魔剣を、心ゆくばかりふるいたいと、今から大変張り切っている次第です。

とかく近ごろは、スマートな時代劇が多くなって来ましたが、今度の「大菩薩峠」では特にボリュームのある本格的な時代劇を目ざしています。

僕の結婚話につ い て・・・

この二、三年、ぼくの結婚問題について、当の本人よりもマスコミの方で、いろいろと御親切にも心配していただき、ぼく自身はよろこんでいいのか、悲しんでいいのか、全く見当に困っています。

何しろ、ぼく自身が全然知らないことが、手を変え品を変えて次次とジャーナリズムの話題にされ、あれよあれよと驚くばかりです。いや、驚くというよりは、むしろ一種のたのしみといった方がいまのぼくの心境でしょう。

次はどんな話が創作されるだろう。といった期待で、毎朝、雑誌の新聞広告を眺めています。白状しますが、ぼくは雷蔵結婚ばなしの熱烈な愛読者なのです。

その種の報道によれば、この三月十五日にぼくと若尾文子さんとの婚約発表があることになっていましたが、その重大なる日も撮影に没入している間に、いつの間にかすんでしまったのに、あとから気がつきました。その次は、五月の何日かに、中村玉緒さんと結婚することになっているのだそうですが、その五月も、もう目の前にきて、いまだにそのきざしも見えません。

マスコミのみなさんが、あれこれと心配して下さるように、すべての具合がうまく運んでいかなくて、まことに申しわけないと思っている次第です。

ぼくのことはさておき、最近の映画界では、中村錦之助さんと有馬稲子さん、長門裕之さんと南田洋子さん、石原裕次郎さんと北原三枝さん等々、映画スタア同志の結婚が盛んになって来ました。

ちょっと考えると、一種のブームのようでもあり、連鎖反応のようにも見えますが、それぞれの話が、偶然に時を同じくして発表されたにすぎないことはいうまでもありません。

流行的な現象ではないのです。

さてぼく自身の問題となりますが、もちろん、ぼくだって早かれ遅かれ、錦之助君たち結婚組の仲間に入るのは間違いありませんが・・・。

そうはいってもただいま現在の情勢では、あの人を、というような特定の女性を胸に描いているのではないことだけは確かです。

ぼくの選んだ妻が、いかなる人物になるかどうか、みなさんも、静かに見守って下さい。