付き人さん座談会
中山 うちの錦ちゃんと、雷蔵さんは大の仲好しで、仲がよすぎて喧嘩する。雷蔵さんのことを「よしやん、よしやん」といってつき合ってるのに、会えばケンカ(笑)。いまでも髪の毛をつかみ合って殴り合いをしますよ。その二人が小さいとき、といっても十五、六だったそうですが、東京の錦ちゃんの家へ雷蔵さんが泊まって二人一緒に寝たわけなんです。すると夜中に錦ちゃんが小便をしたくなって「よしやん、ご不浄へ行きたいんだ、起きろ」といった。雷蔵さん、眠いものだから、「一人で行けよ」っていったらしい。そしたら錦ちゃんが、「起きなかったら、お前の頭へ小便ぶっかけるぞ」といったんですが、雷蔵さんは、「かけてもいいから一人で行ってこい」って相手にしない。そしたら、「よしっ」といって、ほんとに頭から、ぶっかけたというんです(爆笑)。有名な話ですがね。
森本 錦ちゃんは「気にし」(神経質)なところがあるでしょう。この前錦ちゃんが盲腸の手術をした時に、見舞いに行ったんですよ。そしたら「盲腸切ったのか、もう死ぬなあ」とこれが雷蔵さんの第一声ですよ。病気見舞いの第一声だ。
中山 二人が会ったら必ずケンカの種をつくる(笑)。
森本 いつかも西宮で野球があったときだ。二人は仲がいいのでホテルとったところ、急に錦ちゃんが帰らなくてはならなくなった。そしたら雷蔵さんが錦ちゃんに「自動車事故がおこるぞ」とか「自動車がひっくり返るぞ」とか、ギャァギャァやりはじめた。相手が気にするたちだから面白がっていろんなことを言う。で錦ちゃんかわいそうに、立ちかけたり止めたり、ウロウロしていたよ(笑)。そんな調子だね。
中山 映画も長谷川さんのと雷蔵さんのはたいてい見に行くんですよ。そのくせ会うと「なんだあのザマは・・・・」とかボロクソに言ってケンカです。結局仲が良すぎるんですね。
森本 青年歌舞伎のときなんかも、寄ると、相撲かドタバタ。天井へとび上がって手をつけた者が勝だとかいって・・・・ぼくもやったけど(笑)。だから、畳がすぐ痛んでしまう。
(中山克也、森本房太郎、「明星」昭和33年3月号付録より)