■ 三島文学にも意欲充分
『新源氏物語』よりも、更に雷蔵さんが今年後半の勝負の作品と、ひそかに満を持しているものがあります。それは、週刊新潮に現在連載中の三島由紀夫の小説「獣の戯れ」です。
「ボクはなぜだか、三島さんの小説の中の男性に興味を持つんですよ。前に“金閣寺”(映画題名は『炎上』)をやりましたが、こんどの“獣の戯れ”も、連載されてまだ日が浅いのに、不思議とひかれます。三島さんのものでは、このほかに“沈める滝”“青の時代”もぜひやりたい作品ですね。ボクが三島文学にひかれるのは、日活の裕次郎さんが石坂文学に、女優さんの多くが井上文学にひかれるのと同じようなものでしょうね・・・」
といいます。「獣の戯れ」は、もちろん雷ちゃんにとって『炎上』『ぼんち』につづく三度目の現代劇でもあり、演出が俊鋭増村保造監督とあっては、今秋の話題を呼ぶに充分の作品といえるわけです。
「とにかく現在の心境としては、仕事が楽しくてしょうがないというところかナ。『鯉名の銀平』は長谷川一夫さんだけで四回、阪東妻三郎さんに、大谷友右衛門さんがそれぞれ一本ずつ撮られていますが、こんどの作品は素材は同じであっても観点が違うし、作品全体の雰囲気が変ってくると思います。そんな意味で、先輩たちの作られた『鯉名の銀平』に対するファイトもあります。だから『新源氏物語』や『獣の戯れ』とは違った楽しみもあるんですよ・・・」
とバラエティに富んだ作品群だとゴキゲンの雷ちゃんです。
■ 休養は人間ドックで!
雷ちゃんはいま出演中の『鯉名の銀平』『釈迦』の撮影に入る前に、一週間ほど入院しました。
「入院というとオーバーに聞こえますが、ちょっと休みが出来たので、精密検査をしてもらったわけですよ。とにかく、重労働で身体を酷使しているから、暇が出来たら一年に一度ぐらい体をみてもらう必要がありますね・・・」
そんなわけで、一週間の病院暮しを体験した雷ちゃんです。
「ほんとうは箱根あたりへ旅行したかったのですが、体がもとですからね。おかげで、ベッドに横たわっている間にずいぶん本を読みました。とくに松本清張や水上勉の推理小説をとても面白く読みました」
と人間ドック入りの生活を語りつづけます。
「検査の結果は、少し肝臓が弱っているそうですが、これは現代人ならたいがいかかっているものらしいですね。早くに発見したので、心配はないそうです・・・」
と明るい笑顔を見せながら雷ちゃんはいうのです。