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 『日蓮と蒙古大襲来』は、偉大な愛国者日蓮上人の清らかな人格と燃えるような情熱を中心として、蒙古大襲来に際しては、「何妙法蓮華経」の旗の下に、一致結束して未曾有の国難を克服したわれら日本人の姿を、誇り高く表現するものです。

 従って、この映画の物語は、日蓮の救国・救民の熱情と未曾有の国難を中心に、歴史の事実から飛躍して自由に創作したものといえます。

 この映画は文字通り大映年来の夢でしたが、その実現に当って、準備に費やした努力と費用だけでも映画史にかってなかったものです。

 すなわち構想三年、脚本執筆一年半(第五稿まで)を費やし、総製作費五億を計上した中でも、本映画で重大な役割を演ずる特殊撮影については、巨費四千数百万円と投じて、東洋一を誇る特撮用マンモス・プールをはじめとする諸設備を完了し、大映技術陣は、撮影開始前より各種の困難な条件を克服し、数百回にわたるテストの結果、今や海外映画をしのぐ自信を得るに至りました。

 例えば、竜ノ口の法難場面では、一瞬天より降った雷火が、日蓮を斬ろうとする処刑者の刀を三段に断つ、あるいは日蓮が荒天の海に題目を書くと、金色でその文字が浮び、忽ち嵐が凪いでしまう。いわゆる波題目の奇蹟、更に大地震あり、最後に蒙古十万の軍船が博多湾を埋め、数々の戦闘場面を経て、クライマックスの大暴風雨で、全船団が海の藻屑と消え去る凄まじいスペクタクル・シーンまで、かの『十戒』をしのぐものとして、大映スコープ総天然色の大画面を圧し去ることは疑いありません。

 また、スタッフについても、最初より四班編成で劇と特撮とが同時にスタートし、ロケにセットに緊密な連絡のもと、渾然たる作品を作り上げるもので、今回のロケでは鳥取の大砂丘に、富士の裾野に、エキストラ数千の大戦闘場面を約十日間にわたって展開することになっています。

 配役についても、渡辺邦男監督が、「日蓮を演ずるにはこの人をおいてない」と折り紙をつける長谷川一夫をはじめ、北条時宗には市川雷蔵、鎌倉の若武者に勝新太郎、梅若正二、日蓮の弟子に黒川弥太郎、林成年、日蓮を慕う健気な白拍子に淡島千景、武家娘に叶順子(時代劇初出演)らほか、大映のオールスターと新劇人を網羅した大キャストを組み、一ヵ月半にわたって延人員十万を数える大撮影を展開する壮観は、全く映画界未曾有のものといえましょう。

○物語は大変長いため、割愛させて頂きましたのでご了承下さい。


★次回作品封切日

▽濡れ髪剣法 十一月二週

▽日蓮と蒙古大襲来 十月一週 

 封切日は会社の都合等で変更する場合もありますので、お含みおき願います。

 尚、雷蔵さん出演作品五十本記念として、伊藤大輔監督『弁天小僧』を今年末に、又雷蔵さんの念願だった、井原西鶴作『好色一代男』の世之介を来春に、それぞれ製作される事が決定しております。

 会誌第六号でお知らせ致しました秋の作品に、『宮本武蔵』『荒木又右衛門』の出演が決定したとお伝えいたしましたが、これは中止になりましたのでお含みおき下さい。会社の都合により、製作と発表致しましても製作延期や中止になることは良くある事です。会では出来るだけ皆さんに雷蔵さんの出演作品をお知らせしようとおもいますと、どうしてもこうした結果がありますから、御了承下さる様にお願い申し上げます。

 

(「よ志哉」 第7号 09/25/58発行より)