観終った後、頭が痛いのを感じましたが、これは全編余りにも大声で喚き立てる台詞の多かった為ではないかと思われます。特定の人達を除く一般観客に、宗教臭の強いあの映画を長い間、飽きさせずに見せる為には、ああしたストーリーと台詞が必要なのかも知れませんが、もう少し静けさがあっても好かったのではないでしょうか。
又、あの映画はカラーフィルムだったので、戦いのシーン等余りに印象が強烈で、一寸どうかと思いましたが、海の色や、衣裳の美しさ等は、カラーの持つ好さを充分発揮していたと思われます。
前に外国映画でやったカラーとモノクロームの合併等、どうかしら等とふと思ったりしました。最後の蒙古の軍船が、海の藻屑と消えるところはさすが大映が誇るだけあって、中々物凄く、思わず息をのんでしまいましたが、最後の一艘が沈むまで見せられたのは、一寸飽きが来ました。
日蓮をテーマとしている以上、日蓮の出るシーンが多いのは無理のない事と思われますけれど、時宗をめぐる幕府要人の動き等も、もう少し詳しく表わしても好かったのではないでしょうか(それも雷蔵さんの英姿を、もっと沢山スクリーンに見たかった潜在意識から)、でも、どんな時でも彼は真面目にその役に取組んでいることです。
時宗の役でも、天成の品の好さと気魄が、あの役にはぴったりでしたね。本当にあれ以上の配役は望めないのではないかと思いました。そうした細かい表情の動きの巧みさ、それは『炎上』の時にもつくづく感じた事ですが、彼は今に立派な性格俳優になるのではないでしょうか、本当に楽しみなことです。
最後に、何時迄も変わらない誠実さと、演技力の向上、それと彼の幸を祈ってやみません。
(北多摩)
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