1958年6月10日(火)公開/1時間14分大映京都/白黒シネマスコープ

併映:「渇き」(島耕二/山本富士子・川崎敬三)

製作 酒井箴
企画 山崎昭郎
監督 森一生
脚本 鈴木兵吾
撮影 杉山公平
美術 上里義三
照明 岡本健一
録音 林土太郎
音楽 斎藤一郎
スチール 浅田延之助
助監督 井上昭
出演 阿井美千子(小りん)、三田登喜子(千浪)、河津清三郎(浦上修理)、潮万太郎(金太)、舟木洋一(輪王寺ノ宮)、緑美千代(芸妓千代春)、伊沢一郎(貝沼達人)、清水元(雷八)、横山エンタツ(三吉)、滝花久子(ぬい)、南部彰三(大津一伝斎)
惹句 『一人また一人・・・飽くなき魔剣の追求に血に染んで倒れる六人の密使!さて七番目の行手は!』『同志の死命の鍵をにぎる七番目の密使!必殺の剣と、短銃と、恋がからんでスリルとサスペンスの本格時代劇!』『斬れ!斬れ!一人洩らさず叩き斬れ!・・・さて、七番目の行手は?』『同志の命を賭けて江戸へ向う密使七名!だが六人目までは殺された・・・』『潜行なるか、七番目の密使!目ざすは江戸の処刑場!』『剣客の懐に抱かれた黒猫の眼が異様に輝くと、また密使が殺される!』『七番目の密書は男から女の素肌に!追うは剣客か女隠密か!』『次々に殺された六人の密使!七番目の密使は何処に!』

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★ 作 品 解 説 ★

★『七番目の密使』は、時代劇のマンネリズムを打開すべき意欲に燃える大映が、一連の明朗時代劇に成功し、更に新しく放つ、スリルとサスペンスとアクションに満ち満ちた時代活劇篇です。

★画面は鮮鋭を誇る大映スコープ、製作酒井箴、企画山崎昭郎、脚本は鈴木兵吾の野心的な力作。名匠森一生監督が情熱と技巧を傾けて描き、ベテラン杉山公平技師がロケにセットに縦横のキャメラを使い、斎藤一郎の音楽もこの映画のサスペンスを強調するのに預って力があるでしょう。

★配役は、重大使命を抱いて京から江戸へ決死の密使行をする正義と責任感に燃える青年志士に市川雷蔵、これをはばみ、遂には彼を恋するに至る幕府の密偵の女に阿井美千子、またこの志士と生死を共にして剣陣を突破する武家娘に三田登喜子、更に終始魔剣を揮って勤王方に強力な圧力を加える幕府方の役人に河津清三郎が出演するほか、潮万太郎と横山エンタツの陽気な二人組、伊沢一郎の第六の密使、清水元の目明し、舟木洋一の輪王寺宮、新人緑美千代の芸妓、滝花久子の志士の母などの多彩な顔触れ。

★時は幕末安政の大獄の頃、二十八人の貴重な生命を左右する重大使命を帯びた七人の密使が、京から江戸の間に次々と幕府方の魔剣に倒れるうち、最後の一人七番目の密使が、倒れてもやまずの意気で、剣と智謀を以て数々の難関を突破する、最後まで緊張の解けぬサスペンス・スリラー・時代劇で、時代劇に清新の風を吹きこむ強力大作です。

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(西スポ 07/02/58)

ゴシップ帖

七変化の密使!

 『七番目の密使に』は主演の雷蔵が勤王の志士からやくざ物売り商人、虚無僧、はては天然痘患者とありとあらゆる変装をこらして密勅を江戸へ運ぶまでの大活躍を描くもの。

 いっそのこと『七変化の密使』に改題しては、と裏方から声あり。森監督腕組して、成程その通りだ。

京撮に落雷?

 東京で後援会の催物があって上京中だった雷蔵。『七番目の密使』撮影中故ゆっくりも出来ず京都に帰ったが、とたんに馬から落ちてケガをした。幸いたいしたことはなかったが、云うことがふるっている「これがほんとの落雷だ!」とは負け惜しみが強い。(大映No.24より)

 

 

 

 大映京都『七番目の密使』(森一生監督)はこのほど鳥取県浦富海岸にロケして市川雷蔵、阿井美千子、三田登喜子らの出演シーンを撮影した。

 この浦富海岸は鳥取砂丘に近い海水浴場で、夏場はにぎわうところだが、近辺には景勝の地が沢山あって、昔尾上松之助時代からよくロケ地に選ばれており、森監督も六年前『ごろつき船』で来たことのある土地である。

 さて、今度のロケ現場は、一行の宿舎のすぐ前なので、午前八時開始というのに、支度の出来たものから早目に集ってくるので、撮影はスムーズに運ばれ、八時過ぎにはもう最初のカットがOKとなっているという有様。まずこんなロケは最近初めてだとスタッフは大喜び、ちょうどバスの停留所がそばにあり、登校前の小中学校生が大勢集まり「昼からもやってるか」「ああ、やってるから安心して学校に行ってきてや」とスタッフが答えていたが、その昼までには、その日のスケジュールは全部終って「子供たちがガッカリするだろう」とすまなそうな顔つきだった。

 次の日は雨、そして三日目はどうしても午後二時五十分の汽車で帰路せねば製作スケジュールに狂いが生じるというので案じていたが、天気も上々のコンディションとなり、前々日同様、八時にはもうカメラが回っているという忙しさ。現場は前よりもやや遠いので、撮影の終った者から大急ぎで帰り支度を始める。

 とにかくシリから追っ立てられるような調子だから、雷蔵をはじめ俳優連、カメラをのぞき、どのくらいいけばよいのか確めてブッツケ本番をやらかしたところも少なくなかった。

 かくして二泊三日のあわただしい撮影は終ったが「なんだかこんどの映画はあついうどんを食った後で、アイスクリームをなめているような撮影だよ」と雷蔵、目を白黒のテイだった。(デイリースポーツ・大阪 05/18/58)

★ 梗 概 ★

 幕末−時の大老井伊直弼が、傾きかけた幕府権力保全のため、勤王の志士の大量逮捕斬首を強行したいわゆる安政の大獄の頃−在洛勤王派の領袖桂小五郎は、断罪とりやめの勅旨を賜り、これを極秘裡に処刑の日までに江戸の輪王寺宮へ届けて、有為の人材二十八名の命を救う必要に迫られ、一夜、京の長州屋敷から、思い思いに変装した決死の密使六人を江戸へ送った。

 これを探知した所司代役人浦上修理は、あらゆる方面に警戒網を張り、一人二人、・・・早くも四人までこの密使を斬ったが、目ざす密書はいずれも白紙の偽物だった。その頃、彼の許へ、その情人で密偵を兼ねる祇園の芸妓小りんが、祇園の料亭で長州浪人の内輪喧嘩があり、伴左近という若い浪人が仲間割れして故郷へ旅立ったという情報をもたらし、修理はキラリと目を光らした。

 山科の関で第五の密使高岡吾一は捕えられ自決、これを見流して密使を追跡して駆け抜けた見廻組の隊士こそ、第六の密使貝沼達人だった。が、直ちにこれも修理一行の急追に逢い、銃撃を受けて崖から転落した。旅の町人金太と三吉と同行して関を抜けた伴左近は、貝沼の危急を知ると、彼から密書を受取り修理たちの追跡を振り切って逃げた。必然、修理の魔剣は第七の密使伴左近の跡を追うこととなった。

 左近は旅鴉に変装して桑名まで来たが、ここでも突然の非常検問に逢い、居合せた武家娘千浪に頼んで駆落者を装った。船には先廻りした修理、小りん、目明し雷八らの眼が光っている。左近は薄氷を踏む思いで、千浪との偽りの関係を続け、更に二人は宿も一緒に泊まらねばならなかった。その頃、船内でふと口を滑らせた金太と三吉を責め上げて、かの怪しい旅鴉こそ左近と知った修理は、小りんの手引きで宿を急襲した。

 だが、左近は一瞬早く千浪と共に脱出して、尚も追い迫る白刃から逃れ、海辺の網小屋に身をひそめた。ここで左近は初めて事情を明かしたが、千浪もまた彼女の兄春太郎と共に江戸で処刑される大津一伝斎の娘で、生前の父に一眼逢うための旅であることが判った。漸く危機を脱した二人は感激と激情に相抱いた。

 翌朝、身辺の危険をおもんばかった左近は千浪に密書を托し、命あらば品川宿で再会することを約して別れ、これをうかがっていた小りんと雷八を襲った。雷八は海に飛び込み、逃場を失った小りんは、当然斬られると覚悟したが、左近は遂に斬らなかった。浜辺に取り残された小りんは、左近の人柄に打たれ、涙で彼の後姿を見送った。

 修理は一計を案じて千浪を捕えた。彼女を囮にして、救いに来た左近を捕えようというのである。大井川の渡しを渡った修理一行は、川止めをして左近が罠にかかるのを待ったが、そのうちに小りんが発熱してしまった。彼女を介抱する千浪は、うわ言に左近の名を呼ぶのにハッとした。

 その頃左近は金谷側から川止めの制札を無念気に睨んでいたが、偶然来合した金太と三吉の二人組は、いつかの罪亡しのために一計を案じ、彼等が雲助になり、左近を天然痘患者に仕立てて、まんまと川を渡った。が、修理はこれを見破り、短剣を擬して左近に迫った。危機一髪、左近は脱出した。そして混乱に乗じて千浪を救いに来たが、待っていたのは再び修理の魔剣だった。千浪もまたこの隙に脱出しようとした。が、病に苦しんでいる小りんの姿に、再び戻って来て介抱を続けた。勝気な小りんは声を殺して泣いた。

 逃げて逃げて山道で、左近は意外な人貝沼に逢った。貝沼は左近が女に心を奪われて使命をおろそかにしている事を責め、密書は自分が届けるといったが、左近は今やその密書は千浪の手中にあることを告げ、貝沼は激怒して左近を罵った。が、またしても、追跡の手が迫る。左近は崖を踏み滑らして転落した。左近を見失って躍起となった修理は、小田原にある左近の母ぬいを捕え、若し左近が自首しなければ母を極刑にする旨の高札を建てた。

 気丈なぬいは雷八の拷問に耐えた。群衆に交ってこれを見守る虚無僧姿の左近は、思わず飛び出そうとするが、これを止めたのは小りんだった。彼女は左近にぬいの一命は必ず助けるから、すぐ逃げてくれと頼み、雷八のぬいを打つ手をとめようとしたが、冷酷な修理は小りんまで打てと云い放った。堪えきれなくなった千浪が、止めさせようとして思わず口走った一語を聞きとがめた修理は、初めて彼女が密書を持っていることを覚り、抵抗する千浪の着物をはぎとり、遂に帯の中から密書を発見した。修理から追放された千浪は絶望のあまり死を決したが・・・。(公開当時の大映宣伝部発行 DAIEI PRESS SHEET No. 754より)

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