昨日消えた男

1964年4月18日(土)公開/1時間23分大映京都/カラーシネマスコープ

併映:「アスファルト・ガール」(島耕二/中田康子・岩村信雄)

企画 財前定生
監督 森一生
脚本 小国英雄
撮影 本田省三
美術 太田誠一
照明 伊藤貞一
録音 林土太郎
音楽 大森盛太郎
助監督 渡辺実
スチール 三浦康寛
出演 高田美和(お園)、藤村志保(お浪)、宇津井健(大橋兼四郎)、三島雅夫(大岡越前守忠相)、成田純一郎(与力石子伴作)、島田竜三(老中安藤対馬守重行)、北城寿太郎(大導寺主膳)、中村豊(御小姓・酒井加賀守)、中村宗之助(美濃屋庄右ヱ門)
惹句 『人が殺されるたびに浮かんで消える幽霊船推理と剣を競って闇に暴れる二つの顔』『幽霊船を見た男が次ぎ次ぎと闇に消える江戸奉行も知らなかった怪事件を追う謎の二人

  

 

 市川雷蔵はいま『昨日消えた男』(森一生監督)に出演中。かって長谷川一夫が演じた代表作のひとつだ。再映画化だが、雷蔵にとっては新分野の明るい捕物劇。大映では、明朗時代劇路線と名づけて連作したい意向のようだ。

 雷蔵のこれまでの作品というと、『破戒』『剣』などの文芸路線。『大菩薩峠』『眠狂四郎』など、暗い陰のある男を主人公にしたものが多かった。これからは喜劇性のあるものも、どしどしつくろうというわけだ。

 『昨日消えた男』は、推理狂の将軍吉宗が、遊びのなぞ解きだけではあきたらず、同心に身を変えて、連続殺人事件に頭をつっこむ話。雷蔵は吉宗をやる。また事件の途中、正体不明の浪人(宇津井健)と出会う。ふたりは妙に気が合ってしまうが、この浪人も実は京都の公卿だったりして、にわか同心、にわか浪人のおもしろさもねらっている。雷蔵、宇津井のほか女優陣には藤村志保、高田美和が出演する。

 雷蔵は、「時代劇にはこういう楽しさというものが必要だ。こんどの話もおとぎ話のようだが、やる方も楽しいし、見ていただくお客さんも、きっと楽しめるものになると思う」と自信ありげ。

 また共演の宇津井は、「久しぶりの時代劇だが、何度も顔を合わせている雷ちゃんの相手だから、呼吸はわかっている。ここらで腰をおちつけて、時代劇の勉強をしたい」と話していた。(西スポ 03/12/64) 

★作品解説★

 この映画『昨日消えた男』(総天然色)は、大映の市川雷蔵が得意とする軽妙なタッチで描くしゃれた味の明朗時代劇。しかもこんどは、推理的な謎解きでストーリを運びながら人物配置の面白さを巧みに仕込んだ時代劇には珍らしいスリラーコメディーで、最後に用意されたアッというようなどんでん返しは、いかにもオリジナル作家小国英雄の脚本らしい全く意表をついたものです。 

 物語は、退屈な日々を過していた八代将軍吉宗が、江戸城を抜け出し町奉行の同心を志願。当惑の町奉行は一計を案じてすでに解決ずみの水死事件をあてがうが、これが実は奉行所の見落しで、次々と連続殺人事件を呼び、さらにその背後には、天下を狙う大陰謀が秘められているというわけ。何しろ将軍さまがいきなり十手かざして町に飛び出したのであるから、とんちんかんな失敗も一度や二度ではない。それを助ける正体不明の素浪人、お転婆な富豪の一人娘、自分一人の手で飯屋をきりまわす勝気な町娘、などが登場して、素人のにわか探偵振りが面白く展開されていくが、さすがに頭脳明晰な吉宗の名推理は、見事に事件の核心を見抜くというもの。さらに、奇妙な幽霊船の出没、姿なき殺人魔の恐怖、火薬庫の大爆発など、サスペンスとスリルが、ふんだんに盛り込まれて息もつがせず事件を興味深く運んでいくというものです。

  キャストは、将軍吉宗に、久しぶりの明朗時代劇出演と大張り切りの市川雷蔵。謎の素浪人に、一年半ぶりに四本目の時代劇出演する宇津井健。富豪の娘河内屋のお園に高田美和。勝気な一膳飯屋の娘お浪に藤村志保という四人のスターがそれぞれ適役を得て顔をそろえるほか、三島雅夫、成田純一郎、島田竜三、沢村宗之助、嵐三右ヱ門、北城寿太郎といったベテラン演技陣が脇役をガッチリ固めています。 

 さらに、スタッフは、企画財前定生、監督に森一生、脚本はコミカルなものを書いて定評のある小国英雄、撮影本多省三、録音林土太郎、美術太田誠一、照明伊藤貞一、といった一流メンバーが編成されています。   

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★宣伝ポイント★

1.推理と剣の時代劇-正体不明の謎の二人の男(雷蔵、宇津井)の颯爽たる活躍ぶりを強調して痛快娯楽時代劇の線で売る。

2.八代将軍云々は、割らないで行く。

★放送原稿★

 皆様、本日は御来場下さいましてまことにありがとうございます。只今より次週公開の総天然色、『昨日消えた男』の御案内を申し上げます。文化の花さく江戸の中期-退屈男の名君、吉宗に扮する(市川雷蔵)が同心に姿をかえて謎の怪事件に挑む、『昨日消えた男』『昨日消えた男』。

 めまぐるしく展開する怪事件のさ中に、正体不明の素浪人(宇津井健)の出没、それに富豪の娘(高田美和)碇屋の娘(藤村志保)が混然と入りくんで事件はますます複雑化して行く『昨日消えた男』、この映画『昨日消えた男』は小国英夫のシナリオより森一生監督が映画化する時代劇、スリラー・コメディーでございます。幽霊船を見た男が次ぎから次と闇に消える!怪事件の解決はさていかに?

 皆様『昨日消えた男』『昨日消えた男』を何とぞ御期待下さいませ。(公開当時のプレスシートより)

セットで拾ったはなし

その一: ライティング待ちの間、セットの隅で、雷蔵さんは長屋のおかみさんに扮した女優さん達と談笑中。近寄って話を聞くと、どうも赤ちゃんの話らしい。

「今度どっちが生れるかたのしみやわねェ」

「男の子がいい!!女だったらもう知らんわ」

「子供が欲しくってもさずからん人がいるいうのに、もったいない事云うわ、坊ちゃんわ」

「ほっ、そうか」
「でも、坊ちゃん、五人生れて、五人共女やったらどないする?」
「しょないわあ、一人あんたにやるわェ」
「この若旦那、薄情やわ、子供なんかやれるもんやないんよ、ほんまに」
雷蔵さん「いくら長屋のおばはんになってるからって余計な事云うやない!!」とまったくやられっぱなしです。

 こんな話、聞かれれば、たちまち記事にされるわ、とばかり、側にいる我々の方を気にしている。宇津井健さんは、男の子さんのお父さん。こんな話のやりとりを笑いながら聞いている。雷蔵さん、どうして男の子がいいんだろう。やっぱり、男は男同志「強い味方」が欲しいんでしょう。

 出番の声がかかると勢いよく立ち上って出て行かれたが、どうみても二人の子供さんのパパとは見えない若々しさがある。ファンとしては嬉しいかぎりです。(光紀ちゃんは64年5月12日生れです)

その二: 十二時ジャスト「おひるです!」と合図がかかると、同心の黒い羽織をサッとぬいで、足ばやにセットを出て行く。その早さに、ついていく者は大変。すると前方に修学旅行の生徒がいっぱいまちかまえている。雷蔵さんを見ると、カン声が上げる。そのすさまじい輪の中をたくみに払いのけて、又、足ばやにあるいて行く。いっしょに記念撮影が出来ると思っていた、くだんの学生諸君、一寸がっかりした様子。

 部屋に入ったと思うと、すぐに着物をきかえて出て来る。カツラに眼鏡というかっこう。そして撮影所の前の食堂へと消える。「最近すっかりあそこが気に入ってね。自分で出かけて行くんで助かりますよ」とのこと。ひとつ所が気に入るとそこばかり行くとか。凝り性なんでしょう?きっと。部屋の中でぽつんと食事するより、いっしょに仕事をしている人達といろいろ話題を出し合って食事をした方がどんなに楽しく、いい事か、いろんな意味で・・・

その三: 撮影所でのセット見学はつきもの、ある日、セットの中で、雷蔵さん、宇津井さんと話していると、見学者がぞろぞろと入って来たが、足音だけして、まったく声がしない、ろうあ者である。

 御存知のキンちゃんも声もださずに案内しているが、なんとも場違いの感じがする。と雷蔵さんが、キンちゃんを呼んで、耳許でなにかごそごそ云っていたと思うと、キンちゃんは、いつものように大声で案内をはじめた。すると宇津井さんが、「聞こえないんですから、雷蔵さん、小さな声で云わなくってもいいでしょう」というと雷蔵さんは「いやいや、そうじゃないんですよ。我々の云っていることは口の動かし方でなにを云っているのかよくわかるそうですよ、だからああして話をしたんですよ」というと宇津井さん「あっそうですか」と。

 見る事が、その人達にとって一番大切なこと。雷蔵さんのそばまで来て顔をのぞきこんで、一生懸命、指をつかって話をしている。のぞきこまれても雷蔵さんはだまっている。そのうち、その一団が出て行くと、雷蔵さんが、「日本であったね、ああいう人たちをあつかった映画が」「名もなく、貧しく、美しく、でしょ」と云うと「日本ではどうしてもああいう人達を悲劇的にあつかうでしょう。外国の様に、あかるく健康的にあつかう様にしないといけないねェ」「そうですね、ですからあの映画も、ラストシーンをハッピーエンドにして外国へもっていったそうですよ」そのうち雷蔵さんの出になり、カメラの前で演技されている声が流れてきた。

その四:「昨日消えた男」の中で、井戸という字のなぞを解くシーンがありましたねェ手だけしか写りませんが、セリフは前にテープに吹きこんであって、その声に合わせてあの文字を書いて行くわけですが、あれだけ書くのにも、声と手が合わないといけないので、いく度となくテープをかけてテストをする。むしろいつもの演技より倍はかかっているんではないでしょうか。

 さて森監督の組はいつでも早く一日のスケジュールをあげてしまうので有名らしく、取材にいった四日間のうちほとんど三時には、その日の予定は終了するという早さ。まさに出演者もスタッフもニコニコしています。

 そんな調子でいたのに、そのうち一日だけ、三時半頃までかかった時がありました。すると雷蔵さんは大きな声で「皆さん、今日は夜間になりましたから・・・」と、一堂大笑い。森監督「もうそんな時間か、今日はこれで終りです」とは、なごやかな事。

その五: 第四ステージの前、まてどくらせど雷蔵さんがあらわれない。時計をみると、もう二時になろうとする。この組は三時にあがるのにどうしたんだろう。とまつほどに、雷蔵さんがお出まし、「どうも・・・」と云う「やあ」とにこやかに頭をさげる。

 ステージに入ると雷蔵さんは、セットの片隅で、捕手に扮している男の子をつかまえて話をしている。目下雷蔵さんが可愛がっている子で『剣』の時、長谷川明男に「国分さんはもっと美しい顔をするよ」と云った子である。その子に、「アメたべるか」と云ってキャラメルをあげている。「あんたは中原淳一描く所の男の子によう似ているわ、なあ」と私達に同意を求めるので、すっかりその子テレちゃって・・・。それでも雷蔵さんは又「今、あんたん所に女の子の・・・さんから電話あったから出て話をしてあげたけど、前からつき合っているの?可愛いい子か?あんた好きなの、その女の子?」「そんなんじゃないですよ、いやだなあ先生」とすっかりテレっぱなし。

 仕事になると、その子に、御用提灯を「もっと路地の方に向けないとよう見えんからねェ」と注意している。雷蔵さんの若い人達を指導するのには、真剣で、親切なので、みんなから尊敬されているんでしょうねェ。

 さてめずらしく、雷蔵さんが台本を熱心に読んでいるのが目につきます。セリフが、その日に変るそうです。話によると、和製シャレードをねらうために、いろいろ打合わせでセリフが変って行くんだそうです。(64年5月9日発行「よ志哉」39号より)

★物 語★

 文化の花さく江戸の中期。  八代将軍吉宗(市川雷蔵)は、今夜も退屈の虫をかみつぶしていたが、突然何かを思いついたか、ひざをたたいてニヤリ笑った。 

 翌日、鯖江新之助という江戸町奉行所の同心が、荷揚人足の溺死事件を調べると称して木材問屋美濃屋に現われた。主人の庄右ヱ門(沢村宗之助)は、鯖江から被害者との利害関係、怨恨関係、女関係などの本格的な訊問を受けて目を丸くして驚くのであった。鯖江新之助こそ実は将軍吉宗であった。吉宗は、だされた菓子が買収のための小判とも知らず口に入れたり、“古今東西を通じた犯罪の裏に女あり”と弁じたてて、現われたのが腰の曲った婆さんだったり、新米同心の取調べは、てんやわんやだった。

 吉宗は、江戸町奉行の大岡越前守忠相(三島雅夫)にたのみ、同心に身をかえて一件にかぎり事件の捜査にあたることを無理矢理に承諾させてしまったのである。困り果てた越前守は、筆頭与力の石子伴作(成田純一郎)と計って、すでに解決ずみの簡単な事件をあてがったというわけである。しかし、美濃屋の表に居あわせた人足たちの立ち話から越前守の計略を知った吉宗は、なぜか彼らの前から姿を消してしまった。

 その夜、吉宗は大橋兼四郎(宇津井健)と名乗る浪人にであい、お浪(藤村志保)のやっている一膳飯屋の碇屋で酒をくみかわしたことから兼四郎の長屋に居候することになった。ところが長屋へ来てみると、土間に死体が投げこまれてあり、それは碇屋で、美濃屋の持船竜神丸が幽霊船だったといった巳之吉であった。だが、その死体がなぜ兼四郎の家に…吉宗は新事件の究明にのりだした。

 兼四郎は吉宗を巳之吉の雇主である回船問屋の河内屋へ案内したが、主人の善左ヱ門(嵐三右ヱ門)は血相をかえて、余計なことはしないでくれと怒った。長屋へ帰った二人を追って来た河内屋の一人娘お園(高田美和)は、いつものお転婆ぶりにも似合わず、三年ほど前から父の様子がかわってしまったと悄然と告げるのだった。吉宗は河内屋には何かあるとにらんだ。 

 その日、碇屋で第二の殺人がおきた。美濃屋をでたあと兼四郎をさがしていた浪人で、ふところに三十両の大金を持ったまま殺されていた。吉宗は第三の殺人を予知して、小伝馬町の牢へ自分から入った河内屋の住吉丸の船頭嘉兵ヱを救おうとしたが先手をうたれ、嘉兵ヱは掘割で水死体になって浮いていた。そんなとき、吉宗と兼四郎は数十人の覆面の武士に襲われ、夜になって第四の殺人がおきた。それは碇屋のお浪の兄清吉で、竜神丸の舵取りだった。

 吉宗は、連続殺人事件の裏で何かを企んでいるのは美濃屋とにらんだ。さらに、清吉がもっていた紙片の暗号を解いてたぐり寄せられた黒い糸の先は、龍神丸がすべての謎を秘めていることを明らかにした。その美濃屋には浪人がしきりと出入りしたし、その中の大導寺主膳(北城寿太郎)は以外にも尾張藩上屋敷へも出向いた。

 夜にまぎれて兼四郎は単身竜神丸へのり込んだが、驚いたことにお園とお浪がきていたのである。その三人の前に短銃をもって立ちふさがったのは美濃屋庄右ヱ門だった。三人を人質に、呼び出された河内屋善左ヱ門も加えて四人は美濃屋の古井戸に塀られた穴倉に閉じ込められてしまった。そこには火薬をつめた米俵がうず高く積まれてあった。美濃屋の陰謀とは、幕府転覆を企てる大名や浪人たちに武器弾薬を売りつけることだった。

 すでに勝利は目前と、酒宴を開いていた美濃屋や大導寺主膳の前に、吉宗、兼四郎、それに善左ヱ門、お園、お浪が飛び出してきた。古井戸の謎を探っていた吉宗が彼らを救い出したのである。報せをうけた越前守が、捕方総勢をくり出してかけつけ、悪党どもの最後のあがきで大乱斗となった。吉宗は、勅使の登城を数刻後にひかえて帰城せねばならなかったが、その時、大爆発がおこって火が空に吹きあがった。吉宗は、兼四郎と絶叫して立ちつくした。

 そして数刻後、江戸城の謁見の間では全く意外なことがおこっていたのである。(公開当時のプレスシートより)

昨日消えた男

深沢哲也

 将軍吉宗が、同心に化けて江戸の町へもぐりこみ、幕府の転覆をくわだてる陰謀団の存在をつきとめる - という着想は悪くない。小国英雄のシナリオには、前にも三代将軍家光が一心太助のもとで魚屋修行をやる - というのがあったが、それといい、この新作といい、おそらく『ローマの休日』あたりが、発想のもとになっているのだろう。

 吉宗の相棒になるナゾの浪人が、実は、勅使として江戸へ来た京都の公卿だった - という設定も気が利いている。市川雷蔵のとぼけた味と、宇津井健の素朴さ、この二人のコンビはなかなかおもしろいのだが、二人の大活躍を描くには、筋立があまりにもたわいないように思う。

 小国氏には、遠山の金さんを主人公にした同じ題名の佳編があるが、それにくらべると、こんどの『昨日消えた男』は、作り方にkじゃなり安易さが感じられる。幽霊船とか、連続殺人とか、いちおうスリラー・ムードをもりこんでいるが、事件の犯人や黒幕をはやくから見る者に知らせてしまうのは、興味をひどく減殺する。

 これでは、吉宗がいくら推理しても、ナゾときのおもしろ味がにじみ出るはずはない。やはり、この種の捕物映画は、真犯人(或いは黒幕)誰か - という興味を強くうち出すべきであろう。ナゾとき興味を、もっと大切にしてもらいたいと思う。

 吉宗に協力する浪人の正体が、ただ一つの意外性といえるが、これさえも、捕物映画を見なれた者ならば、途中でだいたい見当がつく。いっそ、この浪人をもっと地位の高い人物(たとえば皇族)にでも仕立てたら、意外性はもっとうまく生かされたかも知れぬ。

興行価値:再映画化であるが、作品の歯切れの悪さ、スマートさの不足など、今のファンを考えているのかどうか。60%稼げば良好。(キネマ旬報より)

 

昨日消えた男―小國英雄シナリオ集〈2〉(03/14発行)

  この『昨日消えた男』は、1941年日活退社後のマキノ雅弘がフリーとして東宝で撮った最初の作品を、その脚本を書いた小国英雄がオリジナル・シナリオを再び執筆し、森一生が監督したリメイク作品。

 41年の東宝作品は、ダシール・ハメット作ハリウッドの人気探偵シリーズ「影なき男」を「遠山の金さん」に置き換え、長屋で起きた大家殺人事件の解決に金四郎が乗り出す。長谷川“金さん”山田五十鈴のコンビに高峰秀子の人気も加わり大ヒットとなったが、正月公開に間に合わせるために、わずか十日で撮影されたものだ。

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