眠狂四郎炎情剣

1965年1月13日(水)公開/1時間23分大映京都/カラーシネマスコープ

併映:「ごろつき犬」(村野鐵太郎/田宮ニ郎・水谷良重)

企画 財前定生
監督 三隅研次
原作 柴田錬三郎
脚本 星川清司
撮影 森田富士郎
美術 内藤昭
照明 古谷賢次
録音 大角正夫
音楽 斎藤一郎
助監督 友枝稔議
スチール 西地正満
出演 中村玉緒(檜垣ぬい)、姿三千子(かよ)、中原早苗(おりょう)、西村晃(鳴海屋太兵衛)、小桜純子(小笹)、阿部徹(跡部将監)、島田竜三(藤堂高敦)、伊達三郎(貝塚紋之助)、木村玄(鳥井余七郎)、上野山功一(加倉井輝蔵)、藤川準(弥助)、高倉一郎(守田菊弥)、近江輝子(年増の下女)、水原浩一(佐治兵衛)
惹句 『犯すもよし、斬るもよし冷たく冴える非情の瞳、キラリと光ったその一瞬』『おとりと知りつつ炎の肌を抱き、非情の剣は、見えざる強敵に飛ぶ

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  大映京都“眠狂四郎シリーズ第四話”『眠狂四郎円月斬り』(池広一夫監督)は、池広監督の話によると「眠狂四郎は、エロとチャンバラのおもしろさ」だそうだ。

 幕府の奥深く勢力を伸ばす備前屋をこらしめる話をタテに、サディスチックな姫君や処女をかけてキリシタンを誘惑する町娘、自ら肌をまかせて狂四郎をねらう鳥追い女らが登場、これらにふんする毛利郁子、久保菜穂子、藤村志保、阿井美千子が、つぎつぎと白い肌を見せることになっている。

 このほど行なった宣伝スチール撮影でも、全裸のストリッパーにうすい布をまとわせ、狂四郎の市川雷蔵にすがりつくところばかりを撮影していた。

 大映京都では、この作品と並行して性典映画『これからの性』(瑞穂春海監督)の製作にはいるなど、流行のセックスブームに、同撮影所もついに押し流された感じだ。(西スポ 08/28/64)

 

■ 作品解説 ■

 狂四郎は夫の仇を討つ人妻に手を貸して、男を斬ったが、絶命する間際の謎の一言が気にかかった。藤堂藩士の妻と称する女は、助太刀の礼に肌を許すと言ったが、その夜、寝室に忍び込んだのは狂四郎を狙う剣客であった。藤堂藩が持つ奇怪な秘密に狂四郎は、巻き込まれて行く。狂四郎に迫るもの、剣の林、命を狙う白い肉体の罠。非情の剣は冴えて血を吸う円月殺法。前作をしのぐ娯楽大作であります。

 キャストは市川雷蔵の眠狂四郎、それにからむ女優陣に、中村玉緒、姿美千子、中原早苗の面々、西村晃、島田竜三、水原浩一、安部徹、ベテラン演技陣が各々適役を得ての出演。スタッフ、原作柴田錬三郎、脚本、星川清司、巨匠監督、三隅研次、撮影、森田富士郎。(公開当時のプレスシートより)

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■ 物語 ■

 ある日、狂四郎は武士の妻と名のる女の夫の仇を討たせてやった。仇の男は絶命の間際に謎めいた一言を残したが、この言葉は狂四郎にある疑惑を残した。その女、檜垣ぬいは、狂四郎をともなって藤堂藩上屋敷へ行き、仇討ちの首尾を報告した。そして助太刀の礼に肌を許すといったが、その夜、狂四郎の寝室に忍び込んで来たのは刺客であった。

 翌日、刑場から逃れて来た男伝吉に助けを求められた狂四郎は、伝吉が刑場に引かれる理由に何故か謎めいたものを感じた。伝吉は、自分には若い時に捨て去った娘が一人江戸の何処かにいると語り、哀願したが狂四郎は拒絶した。しかし、狂四郎には仇討の男に感じたあの厭な予感がまたしても迫るのだった。伝吉は“鳴海屋”の一言を残して処刑された。

 浄閑寺の狂四郎のもとに突然、鳴海屋が訪ねて来た。さる大名の姫に色情を解させて欲しいという奇妙な頼みであった。しかし、これは狂四郎を試す鳴海屋の計らいで、鳴海屋はその後、驚くべき事実を狂四郎に打ち明けた。鳴海屋は藤堂藩に滅ぼされた海賊の末裔の秘密を握り、海賊の財宝を幕府に献上すべき仕事にたずさわっていたが、江戸家老跡部将監が横領し、鳴海屋は跡部の束縛下にあった。鳴海屋は跡部の手より逃れる為には狂四郎の力を借りる外なかったのである。

 狂四郎は、品川の海に近い小屋に住んでいる海賊の末裔であるおりょうに会った。その日、おりょうたちは、跡部将監の手の者に襲撃される手はずであった。狂四郎の剣は刺客を倒し、おりょうは、海の彼方に去った。

 跡部将監は、江戸の何処かに生き残り、財宝の秘密を握っている海賊の末にある者を一人残さず全滅しようとしていた。仇討という名目で殺された貝塚紋之助も、処刑された伝吉も、その海賊にかかわりあいがあった男だった。

 檜垣ぬいが跡部の手の者であったのはいうまでもない。ぬいは巧妙な罠をしかけて、狂四郎をおびきよせ討とうとしたが、狂四郎はそれを見ぬき、逆に、かっての約束を実行させてもらおうと、ぬいを犯した。

 狂四郎は、上方下りの人気役者守田菊弥も海賊の末裔の一人であることを知り、会いに行った。しかし、一足遅く菊弥は将監一味に襲われ、瀕死の状態だったが、鳴海屋にいる下女、かよが伝吉の娘だと狂四郎に告げて息絶えた。かよは、まだ世間のきたなさも知らぬ清純な少女で、その少女かよを見たとき、狂四郎はこの少女も狙う跡部一味に激しい憎悪が湧き上がった。

 狂四郎は将藍が参列する菩提寺の法要の席に乗りこみ、将藍の罪状を素っ破抜いた。一味は円月殺法にことごとく倒され、跡部は藤堂藩主・藤堂高敦に切腹を命じられた。

 狂四郎は、少女かよが最後まで何も知らずに、明日をいきぬいていくその姿を見届けてから、必死に縋り寄るぬいをも斬り捨て、どここともなく立ち去って行った。(公開当時のプレスシートより)

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歴史読本1994年11月特別増刊号[スペシャル48]RAIZO 『眠狂四郎』の世界に詳しい。また、シリーズ映画「眠狂四郎シリーズ」参照。

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