忍びの者 続・霧隠才蔵

1964年12月30日公開/1時間32分大映京都/白黒シネマスコープ

併映:「座頭市関所破り」(安田公義/勝新太郎・高田美和)

企画 伊藤武郎
監督 池広一夫
脚本 高岩肇
撮影 牧浦地志
美術 西岡善信
照明 山下礼二郎
録音 大谷巌
音楽 池野成
助監督 黒田義之
スチール 藤岡輝夫
出演 藤由紀子(あけみ)、藤村志保(志乃)、城健三朗=若山富三郎(真田幸村)、小沢栄太郎(徳川家康)、小林勝彦(真田大助)、五味竜太郎(島津家久)、島田竜三(徳川秀忠)、明星雅子(真鶴)、稲葉義男(金地院崇伝)、沢村宗之助(島津義弘)、伊達三郎(服部半蔵)、中村豊(赤目の七郎)
惹句 『ついに家康を倒すあくなき忍者の執念』『最期の忍者は生きている霧に隠れ、闇に溶け、何を狙うか』『皮を斬られ、’肉をえぐられても動ぜずこの身八つ裂きになろうとも復讐する

 

◆ かいせつ ◆

★ 映画『忍びの者』を作って、世にいわゆる忍者ブームを引起こした大映が、その家元の面目と信用にかけて製作する同シリーズ第五作が『忍びの者・続霧隠才蔵』です。

★ 企画伊藤武郎、脚本高岩肇は第一作以来のおなじみの顔ぶれで、こんど新たに「忍びの者」シリーズのメガホンをとる池広一夫監督、撮影牧浦地志の若いコンビの方は、録音大谷巌、音楽池野成、美術西岡善信、照明山下礼二郎、編集谷口登司夫ら一流スタッフの協力によって、野心にみちた娯楽時代劇の出来上がることを期待させます。

★ 出演者は、前作に引続き伊賀忍者霧隠才蔵に市川雷蔵が、忍法の秘術を尽して活躍するのをはじめとして、才蔵を仇と狙う女忍者いわゆる「くのいち」あけみに藤由紀子、同じく才蔵を狙う剣術師範の娘志乃に藤村志保、徳川の心胆を寒からしめる智将真田幸村に城健三朗、ついに名実ともに天下を掌握した徳川家康に小沢栄太郎が出演するほか、小林勝彦、五味竜太郎、島田竜三、明星雅子、沢村宗太郎、稲葉義男らで協力多彩な配役陣を作っています。

★ 大阪落城後、真田幸村と共に九州薩摩へ脱出した霧隠才蔵は、家康方の優秀な忍者群の追求を退けながら南の海・種子島へ渡り、更に薩摩から駿府へとび、城中奥深く宿敵徳川家康に復讐の刃を以て迫るという忍法の秘術、忍者の死斗が全篇息づまる迫力で展開されていく波乱に富んだ物語ですが、テクニシャンで鳴る池広監督が初めて取組む忍びの者シリーズだけに、市川雷蔵十八番の忍者スタイルと共に、興味深い時代劇の生れることが大いに期待されます。(大映京都作品案内 No.764より)

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 忍者ブームの本家本元大映が放つ“忍びの者”シリーズの第五作『忍びの者・続霧隠才蔵』です。第一作以来おなじみの企画伊藤武郎、脚本高岩肇で、メガホンは、“忍びの者”に初登場の池広一夫監督。市川雷蔵の十八番の忍者スタイルが、テクニシャンで鳴る池広監督と組んで、如何に活躍するか、興味深い時代劇の誕生といえましょう。(大映グラフ18号より)

 

 

 

 

 

 市川雷蔵の人気シリーズ第五作『忍びの者 続霧隠才蔵』(監督池広一夫)が、大映京都で撮影を開始した。

 五たび、忍びの者に取り組む市川雷蔵は、「これまでのペースをくずさないで、あくまでも忍者映画の元祖、あるいは本家の面目を保つよう、すべての点で努力するつもりです。あまり荒唐無稽でなく、しかも面白い映画になればいいと思います」と語っており、一方このシリーズはじめてメガホンをとる池広監督は、「私が興味を感じたのは、今日にも通ずるものだが、すなわちある特殊な技術に練達した若者(この映画の場合忍びの術)が、やがてその技能が用いられなくなった時代に感じられる一種のむなしさ、虚脱感といったものが、この映画を見終ってあとに残れば━ということだが、これはあくまで演出者としての心構えであって、もちろん正月映画らしい派手な筋運びや忍者の秘話紹介には、先輩諸氏のあとを踏襲して、万全を期すつもりだから、痛快な娯楽映画として見ていただいて結構です」と抱負をのべる。

 新しい手としては、大坂城を脱出して海上を紀州へのがれる才蔵らに、服部半蔵ら徳川方忍者が水中から襲撃して、水中の忍者合戦が展開されるのをはじめ、種子島では明(中国)の拳法家との対決、さらに駿府城内における霧隠対半蔵一味との死闘などがある。(西スポ 11/30/64)

 

    

◆ ものがたり ◆

 元和元年五月、大坂は落城した。だが、再挙の執念に燃える伊賀忍者霧隠才蔵は、名将幸村を助けて重囲を脱出し、海上に襲う服部半蔵ら徳川方忍者の追撃を退けて、九州薩摩の島津家へ落ちのびた。

 島津の当主家久、隠居義弘らは、幸村の智謀を島津の勇武に加えることをよろこび、打倒徳川の機会をうかがった。鶴丸城内の隠居所にかくまわれた幸村たちのことは、絶対の秘密が保たれたはずだったが、意外にもそれは駿府の家康の方に洩れていることが解って、家久らを驚かせた。これに対して才蔵はひそかに探索の手をのばし、ここに意外な人物自源流師範海江田一閑斎、茶の宗匠宗全らを徳川の隠密と発見した。彼らは代々島津家へ仕えながら、巧妙な隠密組織にしばられていたのだが、一閑斎は才蔵に対決を迫られ、身を恥じて自殺し、娘志乃は父の死に茫然とした。宗全もまた事破れたと知ると自殺して、ここに島津家を狙う隠密網は才蔵の働きによって、完全に一掃された。これを知って激怒した家康は服部半蔵に薩摩潜入を指令し、幸村、才蔵を討ち果たすまで帰るなと厳命した。

 一方、幸村と才蔵は島津の勢力下にある種子島へ渡り、同島の特産ともいうべき鉄砲製造の秘法を探ろうとした。が、種子島の藩主久尚は彼らを丁寧にもてなしながらも、何故か幸村たちを鉄砲工場へは近づけない。霧隠の忍びの術を以てしても容易に入れないほどの厳重な構えだった。

 ある日才蔵は浜に打上げられた若い女あけみを助けて、島の天主堂の神父に預けた。彼女は九州のキリシタン狩りから逃れる途中、船が難破して種子島へ漂着したといい、やがて聖らかな尼僧姿になった彼女は、しばしば才蔵や幸村を訪れるようになった。

 種子島は当時ポルトガルと交易を許され、港には異国情緒が横溢していたが、才蔵はあけみを天主堂へ見送る途中、明国人の酔漢にからまれ、彼らの首領飛竜のおどろくべき秘術と戦った。飛竜は種子島家と秘密裡に明の国産物、鉄、火薬などを交易して、種子島家の死命を握っていたのだ。

 あけみは毎日のように才蔵らの許へ花を運んで彼の心をやわらげたが、彼女こそ大阪で才蔵に殺された忍者武部与藤次の娘で、いまはせむしの怪老人の下に働く女忍者だったのだ。だが、使命のためとはいえ、尼僧姿となって神をあざむき、才蔵らをあざむく罪の意識に今や責めれられていた。一方、駿府の家康はあけみの情報によって、幸村と才蔵が島津の庇護下にあることを確認し、家久に生死を問わず両人を駿府へ送りとどけるよう厳命した。そのため種子島でようやく鉄砲製造の鍵をつかんだ幸村と才蔵は再び薩摩へ呼び戻されることになり、別れの宴が幸村、才蔵、あけみらの間で開かれたが、その席上へあけみの合図と共に疾風の如くおどり込んだのはせむしの老人と忍者たち。

 才蔵は秘術を尽して彼らと戦い、幸村を守ったが、あけみは才蔵を鉄砲で狙う忍者を妨げて彼の一命を救った。事ならずと見た忍者たちが一斉に闇の中に姿を消した後、才蔵とあけみは睨み合った「出てうせろ」「私は武部与藤次の娘だよ」あけみはそういって走り去った。

 翌朝、岩頭にたたずむあけみは、人知れず才蔵の船を見送ったが、背後から現れたせむしの老人実は服部半蔵のため、裏切りの制裁として無惨に斬られた。彼女は霧隠への思慕の声を残して崖下に落ちていった。

 鶴丸城へ戻った幸村は、家久から事情を聞くと、島津家安泰と才蔵の命を助けるために自ら進んで駿府へ行くことを承諾した。才蔵は飽くまで反対して泣いて幸村を説いたが、幸村はいまや家康一人を殺しても天下の大勢を変えることは出来ないと、才蔵に新しい人生をすすめた。

 父の仇と斬りつける海江田の娘志乃を見捨てて走り去った才蔵は、国境で幸村警固の侍を斬り払って救出しようとしたが、幸村はすでに自殺していた。才蔵は幸村の墓にぬかずき、最後の忍者として家康を仕止めると誓った。

 駿府城では度重なる失敗に家康の機嫌をそこねた服部半蔵が必死の警戒をしていたが、才蔵の超人的な秘術は彼らを次々に倒し、ついに家康の部屋の天井から毒針を吹きつけるに成功した。ここに家康は原因不明の急病を発し倒れ、数日ならずして秀忠や重臣たちを集め、天下統治の策を遺言をした。

 これを終始天井裏から飲まず食わずのまま見守っていた才蔵は、家康の臨終の時に初めて姿を現わしたが、家康は動じなかった「余は天下を二握った、徳川の基礎もまた磐石、あとに何があるというのじゃ」かくて家康の死を見届けた才蔵は、駿府城の天守の屋根で幸村の霊へ誇らかに叫んだ「殿、霧隠才蔵は勝ちました!」

 だが・・・(大映京都作品案内 No.764より)

詳細は、シリーズ映画「忍びの者シリーズ」参照。

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