1968年3月9日(土)公開/1時間29分大映京都/白黒スタンダード

併映:「ジェット104脱出せよ」(村山三男/倉石功・宇津井健)

企画 関幸輔
監督 井上昭
脚本 長谷川公之
撮影 武田千吉郎
監修 日下部一郎
美術 上里忠男
照明 古谷賢次
録音 奥村雅弘
音楽 池野成
助監督 辻光明
スチール 藤岡輝夫
出演 小山明子(一ノ瀬秋子)、浜田ゆう子(芸者小菊)、船越英二(水池吾郎)、細川俊之(磯村宏)、加東大介(草薙中佐)、内藤武敏(柏木陸軍中佐)、久米明(「山小屋」のマスター南)、内田稔(小山田海軍大佐)、清水将夫(大原秀人)
惹句 『御前会議の秘密が洩れた色を失った大本営無電が飛ぶ暗号が走る真珠湾作戦を勝利に導く中野学校の精鋭

 

◆ 解 説 ◆

 国際スパイ網の頭脳戦、アクション戦をダイナミックに描いて好評の“中野学校シリーズ”は、この『中野学校・開戦前夜』で五作目、またまたファンの血を湧かせ、手に汗を握る攻防のスリルとサスペンスを最高に盛り込んで製作される。

 昨年度の主演演技賞を独占して、ベテランスターの意気を高らかに揚げた市川雷蔵は、新春早くも、今年の第一作として『陸軍中野学校・開戦前夜』(監督井上昭)の撮影開始と共に、秘密諜報部員椎名次郎に扮して、颯爽と活躍ぶりをみせる。

 出演者は、市川雷蔵、加東大介(東宝)のレギュラーが活躍するほか、小山明子、浜田ゆう子がそれぞれ女っぽさを競って初登場、細川俊之、内藤武敏、内田稔、塩崎純男、清水将夫ら新劇人に、ベテラン船越英二、久米明らが加わって、虚々実々のスパイ合戦を演じる。

 物語は、昭和十六年十一月中旬から十二月八日の真珠湾攻撃に始まる、日米戦争の火ぶたが切って落される直前までの秘話で、香港、東京を舞台に展開する日米スパイの必死の諜報戦が、時間を単位に、最後の一秒まで争って、極秘情報を奪い合う。敵スパイ網は最大最強を誇るP機関で、中野学校は、その正体と情報ルート壊滅を計る。女スパイ、敵の日本人連絡員らが暗躍する中で、すでに最後通牒を本国へ打電し始めるP機関の本拠の地下道で銃撃戦が展開する。

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 大映作品宣伝案内 68年2月号より

 旧作戦争映画が再上映ブームを起こそうとしているが、大映京都の『陸軍中野学校・開戦前夜』(監督井上昭)は、太平洋戦争の火ぶたが切られた昭和16年12月8日の真珠湾攻撃をめぐる、日米両国の激烈なスパイ諜報戦を描いて、今日まで秘められた開戦前夜の裏面をえぐろうというもの。

 当時、日本の打電した暗号文はすべて米側に解読されていたというが、このドラマも御前会議の秘密がもれているところから始まる。中野学校に敵スパイ網“P機関”壊滅の命令が下る。

 P機関の女スパイに小山明子が、雷蔵と初共演で特異なムードをみせる。彼女の演じるスパイは朝鮮人で、当時も米諜報機関に極秘に養成された朝鮮人スパイが、大量に日本で活躍していたことが最近になって明らかにされている。この事実にもとづいて、朝鮮独立のため米側について戦う女スパイ小山と、戦争に巻き込まれる日本を救うために、スパイ活動する雷蔵との一騎打ちがクライマックスとなる。そこに男と女の情愛もおり込まれ、冷酷な人間喪失がスリルとアクションの中で、克明に浮き彫りにされる。

 小山は「私も独立プロの人間として、いい仕事をしたいと思っておりますが、こんどの映画は、娯楽としてもドラマとしても、たいへん興味があります。自分で衣装なども選んでみましたし、初めて共演する雷蔵さんも立派な方ですし、予期どおりのいいお仕事になりそうです」と意欲的。(西スポ 02/08/68)

(みわ註:小山とは1966年公開『若親分喧嘩状』で共演しているのですが・・・)

 風雲急を告げる昭和十六年十一月五日、日本は極秘裡に開かれた御前会議で米英を相手に開戦も辞せずとの重大決定をした。その日、椎名次郎は草薙中佐の重大命令を受けて香港へと発った。それは英米仏のアジア防衛作戦に関する重要書類を奪うことである。数日後、貿易商を営んでいる柏木中佐を訪れ、かねてM物産の商社マンとして身分を偽装して諜報活躍中の磯村海軍大尉と連絡をとった。磯村大尉は明朗な人柄で、M物産香港支店長中田の娘昌子とは相愛の仲であった。又椎名は昌子の紹介でカソリック系の病院に勤める一の瀬秋子とも知り合い二人は互いに好意を抱いた。

 磯村大尉と昌子の協力を得て目的の書類を撮しとることに成功したが、敵の情報機関に捕まり苛酷なリンチをうけた。が、椎名が誘拐されるところを偶然目撃した秋子の通報で駆けつけた磯村大尉に救われた。数日後、盗写フィルムは現像され、文章は軍の暗号班が苦心の末解読した。

 極東米英軍の編成表及び配備要図を見て、作戦参謀は狂喜したが、解読された報告書を見た大本営の首脳陣は愕然とした。それはP機関と名付けられた在日米英仏連合諜報機関から香港本部へあてた報告書であり、特に御前会議で決定された日本の戦争決意の最高機密が書かれてあった。

 草薙中佐は椎名以下中野学校諜報機関の全力をあげ、憲兵隊も指揮して御前会議出席メンバーを徹底的にあらわせた。

 椎名が香港を発った数日後、磯村大尉も海軍軍令部情報参謀に栄転し、昌子と秋子の二人も東京へ帰り、昌子は叔父の国家主義理論家として高名な大原博士の許に、秋子は横浜セント・ヨゼフ病院に勤めることになった。

 草薙機関の必死の捜索の結果、御前会議出席者のうち、二、三の高官が大原博士の許へ出入りしている事実をつきとめた。椎名は昌子を通じ大原博士を洗う一方、軍に協力的な画家水池吾郎の行動に不審をもち、二期生の狩谷を通じて徹底的に洗わせた。画伯の夫人がフランス人で長い間横浜セント・ヨゼフ病院に入院中の事実を知った。

 十一月二十六日アメリカ最後通牒を受けた大本営は断乎開戦準備行動を命じた。開戦日を十二月X日とし、南方軍は集結をはじめ、海軍は大機動部隊を千島から出撃させた。もしこの事が米側に通報されたら開戦第一日で日本海軍は壊滅する。

 日本の危機に直面した中野機関はP機関をつきとめるため必死の捜索を続けた末、水池画伯−徐薬局店主−大原博士邸の金井和枝の線、及びセント・ヨゼフ病院のレントゲン技師スタンリーの関係が浮び上がり、その後の調査によって、セント・ヨゼフ病院がP機関の秘密アジトであることが判明した。

 十二月一日、南方進撃に待機する陸軍部隊と、すでにハワイ目指し航行中の南雲機動部隊に開戦決定の極秘命令が打電された。もはや一刻の猶予も許されぬ。椎名たちはセント・ヨゼフ病院に急行した。(公開当時のプレスシートより)

詳細は、シリーズ映画「陸軍中野学校シリーズ」参照。

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