橋 こんどはじめて共演させてもらうわけですけど、時代劇はむずかしい約束事があるでしょう?
雷蔵 すぐ馴れるサ。殺陣だって十本も撮れば、一応わかる。それに君は舞台やテレビに出てるんだから、心配なしだ。それより橋クンは、現代劇をやりたいんだって・・・?
橋 いえ、時代物がキライというわけじゃなくて、もしボクシング物なんか撮れれば、と思ったんですよ。
雷蔵 フーム、僕もたまには現代物やりたいもんなあ。
橋 雷蔵サン、僕の歌きいて下さってますか・・・
雷蔵 そらスイッチひねれば、必ず歌ってるもん。(笑)
橋 僕、これから歌と映画の二本立で行くわけですが、先輩としてなにか・・・
雷蔵 両方つづければいいさ。君は歌手として一つの歴史をつくったんだから、こんどは俳優としてガンバレばいいんだ。昔の歌手は声だけでよかったけど、いまは舞台や、テレビがあるし・・・アクター(俳優)の勉強をするチャンスだヨ。最近吹き込む予定のレコードは・・・?
橋 詩吟入りの「白虎隊」っていうのがあるんです。
雷蔵 ほう、僕のデビュー映画が『白虎隊』なんだヨ、偶然だなア。(とニコニコ)
−とここで記者が「お互いについて何かひと言」と水をムケると、弟ヒツジの橋クン、ちょっとテレて・・・
橋 雷蔵サンは男らしくって。すごくタヨリになるなア・・・(笑)
雷蔵 いや、タヨりにゃならん。それより君は十七歳にしては、ずいぶん大人っぽいムードを持っている。赤いジャンパーなんか着ているけどね。(笑)
橋 だって、僕は九人兄弟にモマレて育ったでしょ。生存競争のキビシサで、すっかり大人びっぽくなっちゃった・・・(笑)
対談会場にあてた撮影所長室は、早春の陽ざしでポカポカとあたたかい。そこで、雷蔵と橋幸夫は肩をならべて戸外へ
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雷蔵 橋クン、君、身長は・・・?
橋 ちょうど五尺二寸かナ。
雷蔵 僕より一寸五分低いだけだ。しかし君はまだ五、六年のびるから、安心できんネ、ハハハ・・・
二人の明るい笑い声が、なごやかに、あたりにひびく。だが一日おいた十六日には、もう『おけさ唄えば』の撮影が開始された。映画、舞台、テレビ、ショー、レコーディング(吹込み)・・・びっしりつまったスケジュールの合間をぬって、高校の勉強をつづけるセブンティーン歌手。
橋幸夫があたたかい家族たちの手に守られ、幅ひろいファンの声援に応えて、さらにたくましく大成する日を祈ろう・・・
(週刊明星04/02/61号より) |