十一代家斉の四十人目の側室から生れた若君長之助(本郷功次郎)は、甲斐五万石の鷹取藩を継ぐことになり、江戸で将軍と対面の後、甲斐へ向うため岡崎の居城を後にした。長之助の出世をはばもうとする老中堀尾備前守は密使川辺甚之丞をやって、長之助の暗殺をくわだて、岩間五郎太を首領とする刺客をさし向けた。
長之助の行列を守る家臣たちは刺客のため次々に殺され、最後に残った老臣久保平左衛門(小川虎之助)は、幾度か危ないところを救ってくれた旅人の半次郎(市川雷蔵)に、長之助の身分をあかし、松平伊豆守のもとまで送り届けてくれと頼んで息絶えた。
やくざ姿の長之助と半次郎は旅をつづけるが、半次郎には流し芸人のお蔦(淡路恵子)がまといつき、長之助も宿で知りあった百姓の娘おさき(中村玉緒)と恋心を抱き合う。おさきは年貢のために身売りしに行く哀れな身の上なのだった。
半次郎はうるさくつきまとう岩間たちを買収して、逆に手を引かせることに成功したが、川辺はなおも追ってくる。長之助と半次郎は、肉親のような愛情で結ばれてゆき、長之助はゆくゆく半次郎を家老として召し抱えるといったが、「金や名誉ほしさにやっているのではない、てめえが幸福になる尻押しをするうれしさで命を賭けているのだ」と怒った。
無事江戸へ着いた長之助は、将軍と対面し、その場で心憎く思う備前守に無礼ないやがらせをいわれるや、パッと片肌ぬいで半次郎仕込みのタンカ切ってやっつけた。そしてつくづく嫌気がさした長之助は五万石の世継を気前よくことわり、半次郎やおさくの後を追ってゆくのだった。
他にダイマル(弥次郎兵衛)ラケット(喜多八)楠トシエ(おとし)が出演。 |