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☆・・・市川雷蔵が節まわし、格好も面白くコミック・ソングを歌う。これは大映の正月映画『初春狸御殿』でのサービス。この映画は勝新太郎、中村鴈治郎、若尾文子といった面々が“百家争鳴”てんでに歌うので「じゃあボクも一つ・・・」と雷蔵が膝をのりだした次第。なにしろ雷蔵が人前で歌うのは映画上ではもち論、オギャと生まれて初めてという。
彼の声色は音声学上からいうと珍無類。ともかくオヤマできたえたソプラノとテナーの中間としか形容できないそうだ。それでも当人はマンザラでもなくて、この“狸ブシ”をレコードに吹きこんだら、「黒いはなびら」以上に大ヒットするんじゃないかと夢見た由で、まさに“捕らぬ狸の皮算用”。(日刊スポ・東京 12/06/59) |