私は『二人の武蔵』より、狸の方になんとなく期待と云うか、楽しみと云うか、そんな気持でこの作品の封切られるのを待っていました。美しいもの、きれいなものにあこがれる心理かも知れませんが・・・雷さんはやっぱり舞台出身の人、という感じを強くした。雷さんの演技云々と云うほどの作品ではないが、一寸気になった事は、監督が前四回この種の作品を作り上げた人だけに、昔のイメージがだいぶはっきり打出されているのには困ったものと思った。ストーリーの構想もそうだが、特に雷さんのカツラ等、やはり考えていただきたいものです。

 民謡に合せて踊る場面で一箇所、髪を七三に分けた感じのカツラがありましたが、新鮮な、そして甘いムードが出ていたのはどうしてでしょう。狸の殿様と云うと、どこもかしこもピンとはったカツラを使わなくってもいいのではないかと思いました。

 昔からくらべて映画もずい分進歩したのですから、時代にそった衣裳なり、カツラなりを研究して新しいものを作り出して欲しいものです。理屈はぬきにして、とにかく、たのしい、美しい作品でした。

 ( 01/15/60発行 よ志哉15号)