大映京都では八月公開をめざして『安珍と清姫』を、市川雷蔵、若尾文子のコンビに、島耕二監督のメガホンで撮影をいそいでいるが、このほど浄心の滝のシーンにつづいて庵室でのラブシーンの撮影が行われた。

 高さ十メートル、たくみにこしらえられた滝、その上にのった効果係が二本のホースで水を流す。水しぶきをより効果的にするため岩の間にドライアイスを入れてスモークをこしらえて、みるからに涼しげだ。

 この岩頭で安珍を追って道成寺奥の院まできた清姫であったが、安珍の堅い決意を知って、絶望のあまり滝ツボに身を投げようとする。これを安珍が必死になってとめる。びっしょりとぬれた二人はそばの庵室で、ハダもあらわの清姫をひしと抱く安珍。彼の心はオキテを破るおそろしさにふるえながら、清姫の体にむしゃぶりつく。

 若尾も雷蔵に口紅をつけてはいけないからと、本番には口紅をすっかりぬぐいとってしまうという気の使いよう。島監督の両スターへの演技指導の声だけ一きわ高く、滝の音を消していた。

 

 (サンスポ・大阪版 08/03/60)