集いを終えて

 半年も前から待ちに待った五月四日も、夢のように過ぎ去ってしまいました。「集い」毎に盛大な会となって参ります事、心からお喜び申上げます。今日はもう昨四日の楽しかった事ばかり想い出して、一日ボヤッとしております。毎度ながらの芥川さんのウエットに富む名司会振りも心楽しく、七ヶ月ぶりにお逢いする雷蔵さんのいつにかわらぬお元気なお姿に、安心感やら嬉しいやらの名状しがたい胸の高鳴りをおぼえました。

 久しぶりの小唄にうっとりとなり、懐かしい『次男坊鴉』を拝見して、今さらながらの今日の雷蔵さんの演技の進歩に感嘆致し、又、感無量というところでございます。どなたが申上げたかは存じませんが、若宮の小指の仕種のこまかいところまで観察してらしたファンの方に敬意を表し、改めて朱雀門を拝見し直しました。

 暗い場内がパッと明るくなります。ワア何てきれい、美しい、この一言にすきました。白地に紫の牡丹の首ぬき衣裳も特に良くお似合いで、カラミをふんまえた雷蔵さんの素敵なこと、一寸言葉にはいいつくされません。歌舞伎時代の舞台姿もかくやと、髣髴させて下さいます。踊りは少々固いようにお見受け致しますけど、そんなことどこかへふっとんでしまうような。所作台をふむ足拍子も力強く、もう夢中で拝見してしまいました。ですがあまりに短い踊りなので、拍子ぬけしたような物足りなさを感じました。

 兎に角、素晴しい雷蔵さん。ですがいつも思うことなのですが、素顔それも直接の素顔からうける雷蔵さんの感じは、どうしてああも違うのでしょうか。清盛を竜太郎を匂の宮を、また、旅はきまぐれの源太を内匠頭を、それぞれ巧みに演じわける方とは思えません。上品でしとやかで落ちついた背広姿の近代感あふれる雷蔵さんの、どこからスクリーンの気魄が感じられましょうか。

 楽しかった一日、帰り道も、いつ家についたかわからなかった程雷蔵さんのことで頭が一杯でした。雷蔵さんも翌日からすぐお仕事に入られますとか、おつかれなさった事でございましょうね。役員の方々のお骨折に、心からお礼申上げます。