ひと足さきに上京していた雷蔵は東京駅に父を出迎えた

 昨年芸術院会員になった市川寿海の祝賀パーティーが、二月九日帝国ホテルでひらかれた。この日は、ブルーリボン賞授賞式の司会、映画『ぼんち』のうち合わせ、父のパーティー出席などのため、一週間ばかり前から上京していた市川雷蔵も出席。父につきそいながらうれしそうに脇役をつとめていた。

 枯淡な芸に生きる寿海と、話題作『ぼんち』にとりくむ雷蔵、歌舞伎と映画の違いはあっても同じ道をこころざす親と子 ー。

 父寿海が最高の栄誉を得たことは、親孝行な雷蔵にとって、何ものにもかえがたい喜びであるとともに、演技へのファイトをいっそう燃やす因になったことだろう。

 当夜会場入口で、つぎからつぎへと訪れる来会者に、いちいち丁重に挨拶する親子の顔にはつみきれぬ喜びがあふれていた。