雷蔵ファンに贈る夕

 全国一斉封切に先がけた四月二十日、「雷蔵ファンに贈る夕」と題して『お嬢吉三』の特別前夜祭が雷蔵様を迎えて、梅田大映に催されました。

 市川雷蔵来るの報に、参集された長蛇の列を尻目に、支配人様の御取計らいにて裏口入場?に甘んじたグループの人達十数名。どの様にして席に着いたかは、御賢明なる皆様の御想像力にお任せして・・・。三月二十七日の撮影所見学の模様などおしゃべりし乍ら待つ間、程なく、定刻キッカリ場内の照明は姿を消して、ニュースに引続き待望の『お嬢吉三』に万場のファンは魅せられて仕舞ったのでした。

 哄笑の禍あり、時には不安な空気に包まれながら見守るスクリーンに、目を奪うばかりの振袖姿の雷蔵様に、そここで溜息さえ漏れて − 、又、素晴しい迫力のある立廻りに溜飲を下げ、新しい感覚の時代劇に満足した一時間二十分。再び元の明るさに戻った舞台に我にかえり、司会者のお言葉につづいて、万雷の拍手に迎えられマイクの前に立たれた雷蔵さん。ライトにクッキリと浮き出された、薄いブルーの背広に身を包まれた清楚な姿。「お嬢ッ!」とのかけ声に、これが今スクリーンで見つめていた彼?この人のどこにあんなファイトが匿されているのかと思われる位。

 「皆さん、ようこそいらっしゃいました。只今も御覧下さいました通り、私と致しましては、皆さんの御期待に答える様一生懸命頑張っております・・・」雷蔵さんの一言一句をしっかりと耳にとどめようと、水をうった如くに静まりかえる場内、一通り御挨拶も終り、司会者との一問一答。