去る五月中旬、名勝の地、高松市で市制七十周年  -1890(明治23)年2月15日市制施行-、市民会館落成の記念祝賀会が行われ、大映スターの大挙出演があり、雷蔵さんは十二日昼・夜二回にわたり、清元「お祭り」を踊られました。

 会では、この機会に近県会員さんとの茶話会を計画。雷蔵さんの心よい御承諾を得て、実現致しました。

 こうしたローカル的な会合は、昨年暮、岐阜大映館落成の折に続いて二度目のことです。

 

 
 午後五時、香松会館の茶話会会場に集まった会員さんは、四国、岡山と約五十名。昼の部の舞台を終えて駈けつけて下さった雷蔵さんを、心から喜びの拍手でお迎えしたみんなの表情は明るい。会員代表の「本当によくおいで下さいました。心から嬉しくお迎え致します」の歓迎の挨拶に、雷蔵さんは「日頃お逢いする機会の少ない地方の皆さんに、こうしてお逢い出来た事を大変嬉しく思います」と答えていらっしゃいます。

 テーブルに並んだケーキをみて「お茶も出るんでしょうね」等とユーモアたっぷり。固くなり勝ちな会員さんの気持をやわらげる雷蔵さんです。


会員: 雷蔵さんのかくし芸は?

雷蔵: えッ、かくし芸?別にこれと言って・・・私は元来不器用な方なので。(そんな事はない、と一同の声)

会員: でも俳優は器用でなければ出来ないのではありませんか?

雷蔵: いや、演技は感覚(頭を指差して)の問題です。頭脳(声を強く)のね。

会員: 四国は初めてですか?

雷蔵: いや、五、六回来てますよ。むかし歌舞伎時代に巡業で。

会員: 雷蔵さんが今迄に受けられた賞の中で最高のものは?

雷蔵: ブルーリボン、キネマ旬報賞。

会員: ご結婚は何時頃ですか(少々聞きずらそうに)?

雷蔵: さあ、何時と言ってもこれはなかなかむずかしい。私一人の問題ではなく、相手のある事ですからね。


 其の他、活発な中年婦人の「私をお嫁さんにして下さいとはいいませんが、よいお友達になって下さい」との申入れに「やあ−」と頭をかかえて笑い出す雷蔵さん、爆笑する場内の賑やかさ。「これはうちの家内です」と、紹介する男の会員さんに「これはこれはお揃いで、どうも」と雷蔵さん、微笑ましい一場面もありました。サイン、記念撮影と一時間余の茶話会も、陽気な楽しいものでした。