"映画で学ぶ 被差別の歴史"をUP!(as of 08/23/21)

 『破戒』といえばいまさらいうまでもなく、明治、大正、昭和の三代を通じて、それぞれの時代の青年に愛読された島崎藤村の代表作、部落民出身の一小学校教員の社会の疎外に対する激しい苦悩を通して、鋭い文明批評と日本の悲劇をえぐったもの。

 かって木下恵介監督、池辺良、桂木洋子主演によって映画化され、大きな反響をよんだことは記憶に新しいところ。こんどは『炎上』『ぼんち』などで意欲的な仕事を見せた監督市川崑、主演市川雷蔵のコンビによって映画化されることになった。

 映画化にあたって市川崑監督と脚本の和田夏十は“主人公丑松自身にひそむ人間的な弱さをきびしく一般化して、今日的課題に発展させようと思う。これは青春の魂のさすらいの物語である。”とその抱負を語っている。

 またキャストもいかにも市川崑監督らしいもので、主人公瀬川丑松の市川雷蔵を中心に、丑松の同僚土屋銀之助に長門裕之、部落解放を叫ぶ猪子連太郎に三国連太郎、丑松をひそかに愛するお志保に新人の藤村志保、その父であり士族あがりの教員風間敬之進に船越英二、好色な蓮華寺の住職に中村鴈治郎、奥様に杉村春子、猪子の妻に岸田今日子、校長に宮口精二ほかの異色の顔合わせで、京都近郊はじめ各地にロケされた、陽春随一の話題作ということができよう。(キネマ旬報)

 

 

 

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