アイ・ライクおおぜい アイ・ラヴひとり

サアサ、カックラチャッチャと召し上がって

 麻布六本木のゲイ・バー「J」。ママさんのジミーが泳ぐように出てきて迎える。

 ジミー「いらっしゃいませ。(店の者に)注文なくったって、バカスカさしあげて。売上増進週間よ。なんしろ中小企業だもんですから」

 「ヒャー、オバケー」

 ジミー「サアサ、カックラチャッチャとめしあがって」(コンパクトを出してアイシャドウをひきなおす)

 「おきれいですこと」

 「そんなにめかしてみたってさ」

 ジミー「ナニサ、あんたなんか科学の力も及ばない顔だよ。(笑)でもサ、どうやってみても、ここだけは(と下腹部を両手でかこい)どうやってみてもダメネ。(歌になってここに幸あり・・・)」

 「自家発電やってんじゃないの」

 ジミー「お下劣ね。電気ガマじゃないわ。オカマはオカマでも文化ガマよ」

科学の力も及ばない顔だってさ・・・

 あっけにとられていた雷蔵がたまりかねてふき出した。

 「毎晩あそんで、よくお金がつづくね」

 メリー「あたし親から一銭もお小遣いもらっていない。自分の遊ぶお金くらい自分で都合しますっていって、お金やるといっても貰わないの。バーの給料が二万円、ぜんぶ使っちゃう」

 「自分がないときは誰かがもっていて、なんとかなるもんね。だから、月にどれくらい使ってるんだか、見当がつかない」

 「男の子はみんなもってるわね。別にそんなのを選んで仲よくなるわけじゃないけど、社長の息子だったり、代議士の息子だったり・・・。土曜日なんか、一万円札をこんなに(一センチぐらいの厚さを示す)もってくるわよ」

 「五月の連休にはどこへ行こう?」

 「そんとき次第よ。朝、みんなが起きるでしょう。いい天気だなァ、海、いいなァ、いこう−すると誰か一人が“イレンチ、きょうゴルフいかないから、車あいてらァ”。そいで、サァーッといってサアーッともってくる。出かけるころには車の用意ができてるのよ」

 ここで雷蔵が、彼女たちの恋人の有無を聞いた。核心をついたとみえて、一座がガゼン活気を呈する。

 「もちろん、みんないるわよ。“あんた、恋人つれておいでよ”といわれて“いない”なんていったら、大笑いされるわ。ワッハッハァーてなもんよ」

 いっせいにしゃべりはじめたビートガールたちのことなを総合すると、

 「“好き”というのと“愛してる”のとはちがう。好きなのはいっぱいいるけど、愛しているのは一人だけ」

 「恋人も二十以下でなければダメ。二十歳以上のオジサンとの恋愛は反則」

 「二年ぐらいつづくこともあるけど、結局は結婚できないから別れる。愛していればやはり結婚したいわよ」

 突然、メリーが立ち上がってわめく、「ヒェー、会いたいなァ、テッちゃんに」

 彼女は角ビンを一本あけて日本刀をふりまわした実績をもっている。雷蔵にケガがあっては大変だ。時計ももう一時半をまわっていた。