ご存じ花の美剣士

これは珍しい。扮装をぬいだ青年紳士橋蔵さんが大映撮影所へ現われて雷蔵さんを激励しました。歌舞伎時代から仲よしのお二人のお話はいつまでもつきません。

橋蔵 雷ちゃん・・・(と、つくづく顔を眺めて)えらい、きついメーキャップしてるな。

雷蔵 これ「鳴門秘帖」や・・・それより家どないした?

橋蔵 なかなか手頃なのってないね、弱ってるよ。早く旅館住いから脱出したいな。

雷蔵 どうや?僕の家の前・・・裏の山の上にもあるで・・・。

橋蔵 雷ちゃんと隣り組・・・?そいつあ考えた方がいいな。(笑)

雷蔵 なんでやね。(笑)

橋蔵 僕の方はいいけどな、雷ちゃん都合ワルイやろ。(笑)

雷蔵 (ちょっと首をかしげて考えて)そりゃ、そうや(笑)そりゃ困る。(笑)

橋蔵 スネにキズもつ身はなんとかって云うからね。(笑)

雷蔵 お互いさまや(笑)こらあかん、冗談いうてると、ファンに本当かいな思われるで。(笑)

☆仲良しくされ縁

橋蔵 雷ちゃん、いま何を撮ってるの?

雷蔵 「鳴門秘帖」や。橋蔵君は?

橋蔵 「はやぶさ奉行」こんどは二枚目のドロボウだ。

雷蔵 宿命やね、二枚目の・・・(笑)あんまり冒険出けへんしね。

橋蔵 いい役というと、会社はすぐ汚れ役をやりたがるというけどもさ。

雷蔵 ちがうんだよ。

橋蔵 そう、ちがうんだ、キレイなメーキャップでも出来るんだな、娯楽ものでもさ。

雷蔵 ぐっと心理的なものになると、二枚目の印象が邪魔になってくるやろ、難しいなほんまに・・・。

橋蔵 でも演りたいよ、来年は一本か二本位難しい娯楽ものを演りたいな。

雷蔵 三枚目もいい。僕はね、ファン・レターをみてるとね、どういうのかな、甘っぽいものよりユーモラスなものがいいと云ってくるんだよ。

橋蔵 二枚目と三枚目は共通するものがあるんだな。

雷蔵 三枚目はやってみたいよ、地が三枚目やからね、僕は・・・。

橋蔵 どうしてどうして、雷ちゃんは二枚目ですよ、昔からそうでしたよ。

雷蔵 昔といえば、あんたは東京、僕は関西歌舞伎でね。

橋蔵 ウマが合うというのかな、仲がよかったねえ。

雷蔵 なんでやろ、こんな人と・・・(笑)僕はだいぶ迷惑をかけられてるよ。(笑)

橋蔵 お、雷ちゃん態度ワルいね(笑)つまりさ、深い深いし細があったんだよね。(笑)

雷蔵 そうそう、いうなればくされ縁というやつや。(笑)

橋蔵 僕は羨やましいと思ってるんだよ、雷ちゃんの性格が・・・なんかヌーボーとしていてさ、こせこせしてないのが好きだな。

雷蔵 すなわち、カンヨー(寛容)だということ。(笑)

橋蔵 まぜっ返しちゃいけないよ。