☆やりたい三枚目
橋蔵 雷ちゃんによくすすめられ、実際に映画入りの話を受けてからね、僕は一年間も考えたんだな。映画俳優になるのを・・・。
雷蔵 そうよく分かる、僕もずいぶん考えたものな。
橋蔵 舞台と映画の良さは、それぞれちがうしね、これはいまでもそう思っているしさ、悩んだね、大いに悩んだものだよ。
雷蔵 しかし、映画に入ってさ、とにかく一本の主演を撮れるッてのは、大いに魅力だったよ。それに映画は新しい職場やろ、やり甲斐っていうか、生き甲斐も感じたし・・・。
橋蔵 そうそう、それなんだな。ある意味では新しい仕事だから、舞台より張り合いがある・・・まあやってていろんな試みが出来そうなところが映画のよさじゃないかな。
雷蔵 橋蔵君は、もうどの位い出てるかいな?
橋蔵 もう二十八、九本位かしらね。
雷蔵 僕はね、「鳴門秘帖」で、ちょうど三十五本なんだよ。
橋蔵 あっという間だね、月に一本の割りで主演してるしね、その代り自分の時間というものがないんで困るけどね。
雷蔵 それそれ、それや、弱るのは・・・。
橋蔵 雷ちゃんはどんな役柄が好き・・・?
雷蔵 そうやな、ユーモアなもの割りと好きやね。
橋蔵 時代劇はやくざ物が一番いいんじゃないかな、僕はやくざ物が好きだな。
雷蔵 やくざ物が一番分りやすいし、お客さんにも馴染みやすいんだ。おさむらいの扮装だとちょいと堅いし、しばいも楽にくずせないからやりにくい。
橋蔵 大衆にとけこめるのはやっぱりやくざ物なんだよ。
雷蔵 あんたは得だよ、いろんなづらが似合うからね、ホント羨ましいよ。
橋蔵 雷ちゃんも似合うよ。やっぱりづらはやくざ物が一番いいね。