喧嘩友だち
三角関係ハナヤカなりし頃の映画「浮舟」
雷蔵 アレッ、先に手出しをするのは、いつもあンたのほうですよ。
山本 だって、それは雷蔵さんが、あまり憎まれ口をきくからよ。だから、つい口惜しくって・・・(笑)
雷蔵 いや、喧嘩になるといけなから話題をかえましょう。
山本 ズルイズルイ。(笑)
雷蔵 とにかく、歌舞伎時代に、山本さんのような美しい人と映画で共演できるなんて、夢にも思っていませんでしたよ。
山本 ホラ、また始まった。その後がコワイのよ。いつも雷蔵さんのお上手は・・・。じゃ、私もいうわ。
雷蔵 どうぞどうぞ、ご遠慮なく・・・(笑)
山本 私ね、雷蔵さんのデビュー映画「花の白虎隊」を拝見したのが最初なの。あの人いいわね。と感じてましたわ。なんだかとても貴公子的なところがあって・・・。
雷蔵 形勢逆転だな。(笑)ボクはね、撮影所で初めて山本さんに逢った時、−そうまだ一緒に映画に出ていないで、山本さんが何か他の作品で京都へ来られた時、チラッとお顔を拝見したのだけど、なんという初々しい、代表的日本美人であるか・・・。
山本 (笑)もういいわ・・・。
雷蔵 (雄弁的に)一瞬見たら男性をハッとさせるような顔のつくりで、ボクもそのハッと気をのまれた一人でしたが、ところが・・・。
山本 ところが・・・。
雷蔵 いや、どうぞ、お先に・・・(笑)
山本 雷蔵さんて、スクリーンで受ける感じとはまるで違って・・・ザックバランで、面白い人だなァと思いましたわ。
雷蔵 そうですか。しかし、最初のうちはセットでも、お互いにつつましやかでしたね。(笑)
山本 それが「踊り子行状記」のバスの中で・・・。
雷蔵 そうだ。あの頃はお互いにまだロケーションにはバスで行っていましたね。勝ちゃん(勝新太郎さん)も、成年クン(林成年)も一緒だった。
山本 そうですわ。みんなで彦根まで行く間、退屈しのぎに早口言葉をやり出したのが、親しくなった始まりでしたわね。あの時、私がその早口言葉で、舌がまわらないのを、雷蔵さんがさんざんからかって、大笑いに笑って、お友だちになれたでしょう。
雷蔵 そうそ、愉快だったな。
山本 それからというものは、お互いにどんなに気どっても駄目とカンネンしちゃった訳ね。
雷蔵 もうこの頃では、二人の顔が合うと、すぐ喧嘩をするだろうと、何か一種の期待をもって、見守っているからね。義理にでも、一戦やらないと悪いみたいだね。(笑)
山本 そんな義理なんか感じなくてもいいのよ。・・・また喧嘩になりそうね(笑)
雷蔵 話題を変えないと、あぶない、あぶない。(笑)