さて今回は撮影開始の各部の働きをお話致す約束でしたね。会社の幹部会議で製作作品がきまると、監督をだれにするかもその場で決まるものす。と、同時にスタッフの顔ぶれが浮き上がってくるものです。そして前回お話した様にプロデューサーと監督と先ず相談の上キャストが決まるのですが、企画会議の時、監督と同時に主役の顔ぶれも決められる事も多いのです。

 そして「・・・組」「・・・組」と云う様に監督の名前を冠した組が出来上がりステージ(屋内セット)、オープン(野外セット)やロケに出かけたりするわけです。

 組がきますと俳優をのぞくスタッフ全員が集って監督のイメージに従って各部の本読み、打合わせが行なわれます。(裏方本読みと云う)、そして香盤(こうばん)が助監督によって作られます。香盤とは撮影上の便利手帳と云うべきものです

 左記にその例を上げましたので参考に御覧になって下さい。では各部の関係を判りやすく説明しておきましょう。

 まず監督部を中心に、技術部(照明部、撮影部、移動効果部) 装置部−美術(大道具、園芸、工作背景、お道具) 俳優部(衣裳、美粧、結髪、刀剣) 製作部(進行会計) 宣伝部(宣伝写真部) 編集部とありこれらの関係者の本読みを裏方本読みと云います。これからは香盤を土台に厳密な研究繰り返します。脚本に匹敵する画面のトーンタッチ、様式、構図、スピード流れ等について意見の交換が行われ、その都合で逆に香盤の訂正をみたりする事もあります。俳優さんに対しては、別に俳優本読みがあり、先ず主役から順に劇の発展に従い、その配役の性格及び生活、演技、扮装、位置、背景、任務、目的等において、研究を練り、演技の根底を作り最後に、衣裳、小道具、調髪部の忌憚なき意見を総合して決定を見るわけです。

 さて、以上で第三の段階演出台本の打合わせが終ったわけですが、その間各部は直接、間接に連絡を取りつつ独自の行動を開始しているわけです。撮影部はキャメラテストを、衣裳部は衣裳合せ、扮装テスト、美粧部のデザイン打合わせ、小道具の注文等、監督を中心に具体的な準備が行われて行きます。

 こうして演技者の演技プラント監督の脚本イメージは正確に現実化して行くのです。その間にロケーションハンティング(ロケーションの場所を探す事)が行われます。これが決定すると香盤のロケーション地の空間がうめられ一応撮影開始の段取が出来る事になります。

 又この期間中にリハーサル(読み合せ)を行い、演技の研究及び練習が重ねられます。場合によっては省略されて現場の演技テストを以ってこれに代える事もあります。

 しかし俳優は演技の研究と同時に乗馬の練習、お能を舞うシーンがあればお能の先生に、同じように、ナギナタ、弓、機織り、という様にその役に必要なものはすべて練習しなければならない。

 では、今回はこれにて終ります。次回はいよいよ皆様よく御存知の撮影の段階に入るわけです。又各部の説明をもっとくわしくしたいのですが、紙面の関係で省略しました。その外郭だけでもおわかり下さればと思っております。

ロケハン・スナップ 「炎上」において

かつらの出来上りを見て 「かげろう絵図」

今回も大変面白いお話をありがとう御座いました。会員の皆様より大変喜ばれております事をお伝え致しておきます。始めてこの記事をお読みの会員さんへ、この原稿は雷蔵さんのマネージャー森本氏にお願いして書いていただいたものです。これをお読み下さいまして、雷蔵さんのお仕事をよく理解して差上げて下さい。